肌が恋しかったのか、と言われればそうでもなくて。
コルテスを愛しいと思っているのか、と言われてもそうではない。
かと言って、情が全くないのかといえばそうでもないとも言える。
ただ、嫌だとは思わなかった。
触れられることが。
熱を交わすことが。
受け止めることが。
求められることが。
ああ言えばこう言う。へらず口。自分勝手。奔放。
言おうと思えばいくらでも言葉が出てくるコルテスの性格と態度は、夜になると、もっと言えば満月の夜になると、様子が一変する。
たっぷりと全身を愛撫して、コルテスも、自らも、ちゃんと気持ちよくなれている。
というより、気持ちよくなれるようになってしまった。
身体を暴かれることで、堪らないほどの快楽を得られるようになってしまった。
コルテスは愛を囁かない。
勿論それは自らも望んでいないし、自らも愛を語らないし、そんな関係にもなりたいとも思わないし、想像できない。
それなのに、まるで関係がそうであるかのように、一つ一つの動作を丁寧に進めていく。
良くなりたいのなら、無理矢理抱けばいい。
ただ自分の欲を吐き出したいなら、服従させればいい。
暴力で解決すれば手っ取り早い筈だし、性格上、現役時代ならそうであったはずなのだ。
それなのに。
コルテスはそうはしなかった。
嫌な言い方をすれば、手間がかかるやり方を毎回選択するのだ。
操舵士だから、だろうか。
ブラック・スカル号を動かすための要員として、ご機嫌伺いのような。
もっと言えば、いい思いをさせて依存させるためのような。
船を操舵してくれて、話し相手にもなり、身体まで許してくれる退屈のしない都合のいい相手。
考えようと思えば、いくらでも思いつく。
それなのに、マイナスのイメージで思いつくものはすべて否定されるとも分かるような、不思議な感覚があった。
甘いといえばそうだ。否定はしない。
そんな心地良さのために、流されているのだとしても、自分は見て見ぬふりができる。
自分はもう生涯を誓い合う伴侶を探しているような若人ではない。
現に、そう誓った相手は既にいて、今でもその人ただ一人だということは変わらないし、金輪際変わることもない。
分別できる大人、を通り越して、もう世に言う老人の域にいるのだ。
余生の娯楽だと思えばいい。
枯れゆく命に対しての、一時の癒やしのひとしずくの水だと思えばいい。
そうやって沢山の思考を巡らせながら、今夜も、一ヶ月に一度の、コルテスの腕の中に収まる心地良さに、ゆっくりと身を委ねていった。