俗に言う、「いい雰囲気」だったのだ。
寒波が身に染みる時期に入り、室内を暖かくした上で毛布を肩に掛けて、ソファに腰掛けていい酒を飲んで、ふんわりとした雰囲気の中でかち合った視線が、特有の甘ったるさを含んでいたとき。
ああ、キスしたいんだな、と自然と理解出来て、コルテスはバレルを見る目を細めた。
手の甲でバレルの頬を撫ぜると、バレルの視線が一瞬手に向けられ、そしてすぐにコルテスの目に戻される。
拒絶の姿勢を見せなかったバレルに確信して、顎に指を置いて顔を上げさせ、顔を近付けた。
柔らかい唇が重なり、キスは受け入れられた。ウィスキーの苦くも甘い独特の香りを感じながら何度か表面だけを緩く重ねて、擦り合わせて、そこから食むように唇を動かし顔を揺らしていく。
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