お疲れならば安らかに「ランディー、入ってもいい?」
キーアは扉のノックと共にそう声をかける。彼女には探している人がいた。部屋にもおらず一階に降りたわけでもない。もしこの夜遅い時間に出掛けたとしたら行き先を知っているのではないかと思ったのだ。ややあって、扉の向こうから困ったような声で返事があった。――いいぜ、ただし静かにな。どういう事だろう、そう思いながらキーアは扉を開いた。
「あ……」
そこにはランディの肩に頭を乗せて眠る青年の姿――キーアの探している人物がそこにはいた。そっと扉を閉めて近付いても起きる気配はなく、そのまま本題の方へ移った。
「そういやキー坊、何か用があったんじゃねえの?」
「ロイドのがどこにいるか知らない?って聞きにきたんだけど……。えへへ、明日の朝でいいや」
そう言いながら彼、ロイドの事を見た。最近何かと忙しくしていたし、休暇が取れるのはもう少し先の話。であるならば、こうして休む時間も彼には必要だろうとキーアは思うのだ。
「キーアが明日話あるって言ってたってロイドに伝えてほしいな」
それじゃあ、と部屋を出ていくキーアとその足音が止むと少し視線をロイドの方へランディは向けると意地悪そうな声音で口を開いた。
「だとよ、ロイド」
うっと言う声が聞こえると、その声のあとにロイドは目を開いた。
「いつから気付いてたんだ?」
「ま、キー坊が来た時にお前が起きてすぐだな」
気付かれてたか、と溜め息をつくと不貞腐れたように乗せてた頭を持ち上げる。
「起こしてくれても良かっただろ」
「ばーかお疲れなお前を労いてーんだよ」
そっと頭を撫でると少し拗ねたような表情ながらも何処か満更でもない雰囲気をロイドは漂わせていた。
「なんならベッドまでエスコートしてもいいんだぜ?」
「なっ……何言ってるんだよランディ!」
少しは元気になったなと、安心するランディはそのままわしゃわしゃと頭を撫で回す。忙しいロイドが少しでも休めることを、彼は祈るしかなかった。
(ま、俺の側で休めんならそれでいいだろ)
未だ拗ねる彼の機嫌をどう取ろうか、今のランディが考えるべき事はそこにあった。
【終】