世にも奇妙な鈍感男 ランディの恋人は天然タラシで無防備だ、それが彼から見た意見である。どうしてそんな人間が自分を選んだのかという疑問はあるがそれはさておいて。彼にとっては天然タラシは諦められるが、無防備な所はどうしても諦められなかった。無防備なのはある意味付け入る隙となりえるし、事と次第によっては横取りされかねない事も理解している。故に口を酸っぱくして言ってきたのだ、無防備過ぎるから気を付けろと。それがどれだけの人間を魅了して惹き付けているかが分かっていないのだ、本人は。だが何度言ってもそれが止む素振りは一向になかった。
「ったく、なんでかねぇ……」
ランディは肩を落としてそう言うが、言われた本人は彼のいない所でこう言うのだ。――どうしてランディの前でしか隙を見せているのを理解しないのだろうか、と。
ロイドの恋人は心配性である。自身だって見目や面倒見が良くて女性から噂されている癖に、棚に上げてもう少し無防備過ぎると言うのだ。元々天然タラシだの朴念仁だの、果ては『弟系草食男子を装った喰いまくりのリア充野郎』とまで言われるような彼だが恋愛に関しては初心で一途だった。思った事を素直に言っただけでため息を吐かれるのは理解出来なかったが、それが恋人の悩みの種である事はすぐに理解出来た。だがそれを引っ込める事も難しかった。故に悶々と一人で考えた末にある人物はこうアドバイスした。――いっその事恋人の前でもっと大胆になればいいんじゃない、と。恋愛初心者のロイドにとっては天啓も同然で、どうすれば大胆なのだろうかと必死に考えた。そしてふと思いついたのが、普段遠慮して甘えるのを控えていたのをやめる事だった。甘え下手なのは十分承知しているし、今更どうやってとも思うが甘やかすのが元々上手だったランディに抵抗しないだけでそれは叶った。少し不自然だっただろうかとも最初は思ったが、それを疑問に思う様子もなく。ただ無防備な事を嗜められる、それだけであった。
「ふぅ、またやってるの?」
「ロイドさんに関しては本当にポンコツですね、ランディさんは」
双方の心情を知るエリィとティオが溜め息をつく。それに気付かないキーアはどうしてだろうねと首を傾げて、平和な支援課の一日が終わるのだった。