幽霊 渋谷は今日も晴れ模様。ビルの群れに切り取られた痛いほどの青色の上を、強い風に圧された雲が快速で横切っていく。眠くなりそうに真っ白な日差しが燦々と休日の光景を照らしている。短く刈りそろえられた芝生が気持ちよさそうに太陽を満喫していた。人々はテイクアウトのコーヒーを片手に、連れと睦みあって笑っている。
友人はその中を縫って歩いていた。ただ独り、光を拒絶するように画面に目を落としたままで歩いていた。
ミヤシタパークを降り、山手線の高架下を潜る。
グロい、とすら思えなかった。それはもはや人の形を留めていなかった。奇妙なことに俺はその場でリンドウが行手を遮られて遠くに離され、自分の体だったものが車に乗せられていくのを見ていた。リンドウが見なくてよかったと思う。それに見たところで自分と判別できるかどうかすら微妙なラインだった。
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