墨絵 ミヤシタパークを降り、山手線の高架下を潜る。晴れた日でもこの高架下はまるで光を拒絶するように暗く、淀んでいる。道路の脇に白い花と菓子がひっそりと据えられていた。白い靴が退屈なテンポでアスファルトを踏み、神宮通りに向けてトンネルを抜けると再び陽光が眩しく視界を埋め尽くす。
赤い絵の具を垂らしたみたいだった。
乾いたその色が、今も風景の端を染めているように錯覚する。
スマホを取り出して”ポケコヨ”の画面を開く。マップを開いて辺りを確認すると、道の向こうにカーバンクルが一匹表示された。レアリティは高くないがどうせ暇だしいないよりはマシだ。そのまま交差点を渡ろうとして、高く鋭い警告音に咎められた。視線を上げると歩行者用信号はとっくに赤に変わってしまっている。追い立てられるように急いで歩道に駆け戻り、スミマセン、と心の中で謝った。信号待ちの人並みがうんざりしたようにこちらを睨んでいる。
1974