硝子を飲み込んで ごうごう、とひどい雨が降りしきっている。激しい勢いで空から注がれる水滴たちはレンガ造の壁や地面を容赦なく殴打し、数時間ほど前には美しかったはずの街並みを、いっそ不気味なものにまで貶めていた。
そんな街並みを、常日頃から鍛えていると一目で分かるほど均整のとれた体付きを持つ藤色の髪をした青年が、傘もささずにひた走っている。迷路のように入り組んだ道に舌打ちを打ちながら、目的地へとなるべくまっすぐに。水分を含んで顔にべちょりと貼り付く髪に対し、実に忌々しそうに大きく舌打ちをしてから、青年はそれを首元で短く結えた。
そこからまた走り出すも、数分したところで先ほどと同じ場所に出てしまったことに気づき、青年は髪を苛立たしげにぐしゃりと掻きむしった。
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