03.
廊下を歩きながら、七海は、はぁ、と溜め息をついた。隣の灰原が目ざとく気づく。
「どうしたの。疲れた? お腹すいた?」
ここで「悩みごと?」と言わないのが灰原だ。天然だとしても気遣いだとしても、ありがたいと思う。
「食べたばかりでしょう、さすがにまだ減ってない」
「そっか! さっき食堂でおにぎり作ってもらったから、もし減ったら言ってね!」
「いつそんなことしてもらったんです」
「最近毎日頼んでるから、定食と一緒にこっそりもらっちゃった! 三個あるから大丈夫だよ!」
「それ、普段はひとりで食べてるんですか? 夕食の前に?」
食堂からの帰り道、犬のように人懐こい同級生の偉業に感心しながら、七海の脳は別のことを考えていた。
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