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    mado342

    @mado342
    笛!(三渋*渋将*渋三*柾翼etc)とFree!(まこはる)の二次創作。腐向けのカプ要素含むSSが多め。
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    mado342

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    渋将ちゃんの日用に書いてた小話。
    やっと書き上げられました。
    付き合いたて。二人とも恋愛初心者🥰
    可愛いふたりを書きたくて…お楽しみ頂けましたら幸いです。

    #笛!
    flute!
    #渋将
    shibuWill
    #渋将の日
    #渋沢×将

    質問ごっこよく晴れた空から差す太陽の光がやわらかくて冬にしては暖かい。そんな日曜の午後。

    「好きな食べ物は何ですか?」
    「鯖の味噌煮……かなぁ。風祭は?」
    「ぼくは……カレーかなぁ。唐揚げ乗っかってるやつがいいです」
    「トッピングか。豪華になって良いよな。今度一緒にカレーでも作ろうか。ここのキッチンをお借りすることになるだろうから、ご家族の了解が取れたらだけど」
    「兄なら大丈夫だと思います。少し多めに作って……兄の分もいただけたら、喜んでOKしてくれるんじゃないかなぁって」
    「ああ、もちろん。たくさん作ろう。カレーはその方が美味いしな」
    「ありがとうございます! 楽しみです。じゃあ……次、先輩の番ですよ」
    大きな瞳をきらきらと輝かせ、将が渋沢を見上げて笑う。
    会話は暖かな陽だまりのように、緩やかで、穏やか。

    「そうだな……じゃあ、風祭の好きな色は?」
    「好きな色……うーん……青かなぁ。水色の方が近いのかなぁ……良く晴れた空の色みたいな。そんな青です。先輩は?」
    「空の青か。うん、風祭に似合うな。俺は……そうだな、オレンジが好きだな」
    「夕焼けみたいな?」
    「それも良いけど、朝の……日が昇ってきて少しずつオレンジになるあの時間が好きなんだ」
    「先輩早起きでしたもんね。……まだ寮にいた頃、起床時間よりも早くに目が覚めたことがあって。先輩を見かけたんです。観葉植物にお水あげてて。優しいんだなぁって」
    にこりと笑みを浮かべて語る将の言葉に、渋沢は気恥ずかしそうに笑って頬を掻いた。
    「見てたのか。声かけてくれれば良かったのに」
    すると将は驚いたように目をぱちくりと瞬かせて。
    「そっか……声をかければ良かったんですね」
    同じ学校にいた時には言葉を交わしたことすらなかった。三軍で練習も一緒に出来ない自分が覚えられているとも思っていなかったから、どこか気後れしていたのかもしれない。
    黙り込んでしまった将に渋沢が慌てて声をかける。
    「まぁ、今こうやって一緒にいられるようになったことの方がずっと大事だから」
    な? と笑って渋沢が大きな手のひらでポンと将の頭を優しく撫でる。
    武蔵森を出たことについて将の中に後悔はなかったから、こんな風に優しくされると少しだけ申し訳ない気持ちになった。けれど見上げた渋沢と目と目が合うと、今この時を一緒にいられることの大切さが伝わってきて……『ありがとうございます』の気持ちを込めて、将はふわりと微笑んでみせるのだった。
    「……はい」
    「よし。じゃあ次は風祭の番だな。質問……というか、聞きたいことあるか?」
    「ん、と……」

    渋沢と将が付き合うことになったのは昨年の終わり頃。
    都選抜の練習で怪我を負った渋沢を見舞いに、将が松葉寮を訪れたことが始まりだった。
    付き合いたてということもあって何をするのも楽しいけれど、まだまだ手探りな二人が始めたのがこの『質問ごっこ』だ。お互いのことを知りたい一心で捻り出した質問は中学生らしい可愛らしいものばかりだった。
    しばらく考え込んでいた将は、うーん……と首を捻った後にやがてこう切り出した。
    「先輩は…………、先輩は犬と猫、どっちが好きですか?」
    言いかけてから随分と間が空いたことが少し気に掛かったが、まずは将の質問に答えることを優先させる。
    「犬と猫か……どっちも違う可愛らしさがあるよな。実家では犬も猫も飼ってるよ。風祭は? どっちが好き?」
    「そうなんですか?! いいなぁ。ぼくは生き物ペットって飼ったことなくて……どっちも可愛いなぁって思うけど、この間水野くんの家で犬と遊んだの楽しかったから犬が好きかなぁ。すっごく大きくて、人懐こくってお利口さんなんです」
    その犬のことを思い出しているのだろう。将の顔がにこにこと綻ぶ。微笑ましく思う気持ちはあるのに、どうしてだか曇る感情が渋沢の中に生まれてしまう。その感情の名を渋沢は知っていた。
    「そうか……。なぁ、風祭」
    少しだけトーンの落ちた渋沢の声に、何か気に障るようなことを言ってしまったかな、と将の中に緊張が走る。だって大好きになった人を、悲しい気持ちや良くない気分にはさせたくなかった。
    「は、ハイ!」
    緊張に全身を強張らせてしまった将を見て、今度は渋沢が畏まる番だった。ポリ……と小さく頬を掻き、渋沢は申し訳なさそうに。
    「いや、そんなに畏まらないでくれ……。その、だな………………抱きしめても良いだろうか」
    少し長めの沈黙からひと呼吸を置いて告げられた渋沢の願いは、将にとって予想外のものだった。
    「えっ」
    一瞬で将の頬が熱を持ち真っ赤に染まってゆく。
    「駄目なら断ってくれて良いよ。風祭が嫌だと思うことはしないから、そんなに身構えないでくれ」
    ふっと苦笑して渋沢が指の背でそっと将の頬を撫でる。

    付き合うことになってからも二人きりで会える時間は少なくて、その間に出来たことと言えば握手の延長のように手と手を繋いだことがあったくらいだ。
    『付き合う』ということが、何をどうすれば『恋人同士らしく』なれるのかがまだよく分からずにいるから、渋沢と一緒に過ごせる時間がただ嬉しい反面、慣れない関係に未だに少し戸惑ってしまう将だった。
    けれど。
    戸惑いはあっても渋沢に乞われたことの内容を、将は嫌だと思わなかった。だって頬に優しく触れられた手の暖かさが、その感触が嫌ではなかった。──嬉しい。と思ったのだ。
    だから。
    「い、嫌じゃないです! ただ、あの、その……ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、ビックリして……」
    真っ赤な顔を隠すように俯いて、それから将はつつつ……と渋沢のすぐ隣まで距離を詰めた。トン、と肩が触れ合う。
    「……うん。ありがとな」
    渋沢は恥ずかしそうにそっと身を寄せてくれた将の肩を抱き寄せるとそのままゆっくり胸の中へ、大切なものをしまい込むように優しく将を抱きしめた。
    そうしてひとつ、ホゥと緩やかに息を吐き出してから。
    「すまない。風祭に他意はないんだって分かってはいるんだが……水野に少し、嫉妬してしまった」
    「水野くんに?! み、水野くんは、サッカー部の仲間で……友だちですよ?」
    「ああ。そうだよな。分かってるんだ。それなのにこんなことで嫉妬して……自分でも情けないと思うよ」
    小さな声で、「ごめんな」と零した渋沢に、腕の中から顔を上げて将がもそりと動く。
    「渋沢先輩でも自分のこと情けなくなったり、嫉妬とかしたりするんですか……?」
    先輩はいつでも落ち着いていて優しくて、クセの強い都選抜のメンバーたちを纏めるリーダーシップもあって、おおらかで。──なんて、先輩のことを年の差以上に大人のように感じていたけれど。そうやっていつの間にか、自分は彼のことを大きく見すぎていたのかもしれない。
    抱きしめられた腕の中から渋沢を見上げてぼんやりと、そんなことを将は思った。

    「……参ったな」
    大きな瞳で将にまっすぐ見つめられて、渋沢は困ったように眉を下げて笑みを零す。
    「風祭の中に思い描かれた俺はどれだけ立派な奴なんだろうな。すごく好きで、ようやく付き合えることになったばかりの恋人を抱きしめるのにだって緊張するし、他の誰かと楽しそうにしてる話を聞いて嫉妬もするよ。……ガッカリしたか?」
    そう言って緩く笑い将の顔を覗き込む渋沢に対してブンブンと目一杯に首を振り、将は否定の言葉を探す。
    「ガッカリなんて! する訳ないです!! だって……」
    「? だって……?」
    「だって、その……ぼくも勝手に、先輩がぼくより先に付き合ってた誰かに嫉妬してたから…………」
    「そんな相手はいないぞ?」
    「ウソっ!?」
    驚きに目を瞬かせた将の口から出た言葉に疑念の意味合いはなかった。なかったが、それは渋沢の眉を僅かに下げさせた。
    黙って無言のまま、困ったように笑ってみせる渋沢の表情に、将はその言葉が嘘でないことを知る。
    「……ほ、本当に? あっ! えっと、先輩を疑ってる訳じゃなくてですね。どう言ったら良いんだろう……先輩はすごく優しくてサッカーも上手で、みんなに慕われてて、だから、えっと……」
    言い訳じみた否定をすればするほどにしどろもどろになって、将の顔に赤みが増してゆく。どうやったら初めての恋人があなたで嬉しいと、大好きなのだと伝えることが出来るのだろう──と将は懸命に考える。
    すると今度はフワリ、喜びの宿った優しい笑みとともに渋沢の手が将の頬に触れた。
    「ありがとな。……風祭が好きだよ。初めての恋人も、こうやって触れることも……その相手は全部風祭が良いって思ってるんだけど、風祭はどう?」
    そう言って大きな手のひらが将の頬を包み込む。優しく上向かされて合わさった視線はいつもより熱い気がした。
    「先輩……」
    大きな手は将にとって憧れの象徴だった。
    その手のひらから伝わるぬくもりが、将に憧れ以上の感情をもたらして……淡い恋心に灯を点してゆく。
    「ぼくも……ぼくも全部、渋沢先輩が良いです……」
    頬を包む大きな手にそっと自分の手を添え答えると、渋沢は嬉しそうに目を細めて。
    「そうか……良かった」
    と微笑んだ。
    そうして一拍ほどの短い沈黙の後、渋沢は少し遠慮がちに。
    「このまま……キスがしたいと言ったら、風祭を困らせてしまうだろうか……」
    ひとつひとつをきちんと言葉にして尋ねるのは、まだこの関係に慣れることが出来ずに戸惑っている将への、渋沢なりの誠意だ。
    「……っ」
    丁寧な言葉の端々から渋沢の優しさと誠実さが将にもきちんと伝わってくる。
    だからこそ、自分もきちんと答えなければ……と将は思う。
    だけどそう思えば思うほどに気持ちが焦って頭が真っ白になってしまって、ただ口唇だけがパクパクと動いた。
    「……風祭?」
    「あ……、えっと……」
    将からの答えを待つ渋沢の頬も微かに赤く染まっている。
    「さっきも言ったけど風祭が嫌だと思うことはしない。無理強いする気はないんだ。困らせたい訳じゃないから、ダメな時は言ってほしい。風祭がしても良いと思える時までいくらでも待つよ。そんなことで嫌いになったりしないから……素直な気持ちを教えてくれ」
    将の緊張を解すために渋沢は言葉を重ねると頬を包む手を離して最後に前髪をそっと梳いた。
    離れてゆく渋沢の手を惜しむように、将の目が大きな手を追いかける。見上げた先には鳶色の瞳があった。いつもは穏やかで優しく将を見つめてくれる瞳が今は少し、不安げに揺れている。
    「ぁ……」
    ──先輩だって緊張もするし、嫉妬もするって、教えてくれたばかりなのに。
    「あの! あの……っ」
    気付けば手が渋沢のシャツを掴んでいた。
    離してはいけないのだと、離したくない人なのだと感じて、シャツの裾を握る将の手にきゅうと力が篭もる。
    「風祭。慌てなくて良いから……無理もしなくて良い。大丈夫だよ」
    少しでも緊張を解してやりたくて渋沢はポンと将の頭をひと撫でしてから、「それに……」と微笑わらってこう続けた。
    「もう先輩後輩ってだけの関係じゃないんだ。遠慮せずに、思ったことは何でも聞かせてほしい」
    優しく言い聞かせる声も手も、渋沢が誰より将を想っているのだと伝わってくる。
    ──なんて大切にされているのだろう。
    改めてそれが分かって、将の胸がギュウと詰まる。
    鈍い鈍いとまわりから言われている自分にだって間違いなく伝わるように、先輩は丁寧に言葉を選んで優しく触れてくれるのだ。
    ──ぼくもちゃんと、伝えたいな。応えたいな。

    「……あの、さっきも言ったけど、嫌じゃないです。先輩がぼくのこと考えて優しくしてくれるみたいに、ぼくも先輩を不安にさせたりしたくないです。だから、その……つまり…………」
    まっすぐ渋沢を見つめていたいのに、将の声はだんだんと小さくなって真っ赤な顔が俯いてゆく。
    将はそのままトンと渋沢の胸元に顔を埋めて。
    「か、風祭?」
    「困ったりなんてしないです。ぼくだって……すごく、ちゃんと、先輩のこと……大好きなんですよ?」
    伝えたいのはたったのひとこと、『好き』ということだけなのに。そのひとことを伝えるのがこんなに難しいなんて。恋愛って本当に難しい……と改めて将は思う。
    ──上手には無理でも、ちゃんと伝わったかな?
    赤い顔のままチラリ、将が渋沢を見上げてみるとこの上なく嬉しそうに、愛しげに。将を見つめる渋沢の姿があった。
    「そうか、良かった……ありがとな。俺も、風祭が好きだよ」
    渋沢がゆっくりと指の先で将の顎を持ち上げる。
    その仕草にうっとりとして上向かされても目が離せないでいると、渋沢が困ったように、照れくさそうにはにかんで。
    「風祭。目を……閉じてもらっても良いだろうか……」
    心臓がドキドキとうるさい。
    言われるままにゆっくり、ゆっくりと、将は静かに目を閉じた。

    口唇にそっと触れたぬくもりが、触れた時と同じように優しく離れてゆく。
    「………………」
    「風祭?」
    黙っていたら窺うように顔を覗き込まれた。
    頬や目元がほわほわと熱くなってきたのを感じる。
    初めてのキスはびっくりするくらい優しくて、暖かくて。飛び切り甘いような気もして。
    言葉にならない思いに将はただ渋沢の顔を見つめる。いつもより近くにある渋沢の顔にやっぱりドキドキしながら。
    「何だか……あっという間すぎて……」
    するともう一度。
    今度はしっとりと口唇が重ねられた。
    「………、」
    角度を変えて優しく。二度、三度と触れ合わせた後に口唇の隙間からふっと小さな吐息が漏れて。
    「勝手にすまない……嫌だったか?」
    心配そうに問いかけてくる渋沢に、嫌じゃないですと伝えるためにフルフルと首を振ってから、やっとの思いでポツリ、将はこう答えた。
    「心臓が……」
    「えっ? 心臓」
    慌てて肩を掴む渋沢に将はモゴモゴと。
    「喋ろうとしたら……口から心臓飛び出ちゃいそうで……」
    そう言って将は小さな手で口元を覆って俯く。
    「…………ハハッ」
    プッと渋沢の笑う気配に空気が揺れて和らぐ。
    「それは困るな。じゃあ……飛び出さないようにもう一度、口唇塞いでも良いか?」
    コツリと額を合わせて優しく問うてくる渋沢の声に、収まりかけた頬の朱が赤みを増してぶり返す。
    二人でいるとドキドキして仕方がないのに、口唇の触れた感触も抱きしめられた腕の暖かさもこの上ない幸せを将に与えてくれるから。

    「えっと、じゃあ……お願いします」

    近付いてくる渋沢の口唇に、将はそっと瞳を閉じた。


    END
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