吸血鬼パロ 開け放った窓から入る風によってカーテンが音を立てて靡いていた。暗闇に浮かぶ満月のため今夜は明るい。
マトリフは思わず首筋を撫でていた。そこには僅かに残る牙の跡がある。今夜もあいつが来るだろう。
するとチャイムが鳴った。どこか安っぽくて間延びした音に、マトリフはスリッパを鳴らして玄関へと行く。マトリフは確かめもせずドアを開けた。
「お邪魔します」
丁寧に頭を下げるガンガディアに、マトリフは口を曲げる。思ってたのと違うよなあと思ったのは何度目だろうか。
ガンガディアは吸血鬼だ。そしてマトリフはガンガディアの餌食である。といっても、ガンガディアは物語にあるような黒いマントは着ていないし、コウモリなんかに変化もできない。普段は善良な公務員として仕事をしているし、納税もしている。ただ月に一度だけは人間の血を飲んでいた。
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