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    asano5han

    @asano5han

    小説の進捗とか載せようかなぁ

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    asano5han

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    6月に行われるGSMBでお出ししたい兄弟の過去捏造本の進捗です。幼少期〜はば学入学に至るまでを描きたいと思っています。
    とりあえず、ADVのような一人称視点のこんな雰囲気の本、出した〜い!!
    ケツ叩きの意味も込めて公開します。
    多少推敲しましたが、まだベタ打ち状態なので文章色々おかしいです。すみません。

    進捗サンプル 人間は、嫌な記憶の方が鮮明に残りやすいらしい。どこかで、そんな話を聞いたことがある。
     だから、だろうか。
     ルカが家に来た日のことは、今でもよく覚えている。
     
     黒いランドセルを背負い、俺の両親に付き添われ玄関に佇む幼いルカは、俯きがちに申し訳なさそうな顔をしていた。
     シン……と静まり返った玄関は、扉一枚を隔てて外の世界から切り離されてしまったように、冷たくて重い空気が漂っていた。
     ほんの数秒前、扉が開いていた時に見えた外の世界は、春の日差しが地面を暖かく照らしていた。柔らかな風が木の葉を揺らし、遠くから小鳥の鳴き声が聞こえてくるような、そんな麗らかな景色が広がっていた。
     それなのに。扉を閉めただけで、ここだけがその世界から取り残されたみたいに重く、重く、沈んでいる。まるで誰かが泣いたあとみたいな、冷たい空気だった。

     その前日の夜、夕飯を食べ終えて、いつものようにテレビを見ようとした時だった。『大切な話がある』と両親が神妙な面持ちで言った。
     普段であれば『早く宿題をしなさい』と言う母さんが何も言わない。いつもと違うその様子に少しだけ浮き足立つ。いったい、何の話なんだろう。ワクワクしていた。
     俺は――今思えば不謹慎だと思うが――台風の時の雷やちょっとした地震なんかがあると、すぐにはしゃいで騒ぐ、そういうガキだった。
     だからあの時も、両親のただならぬ空気を感じ取って、妙な高揚感を感じていた。
    『突然だけど、コウはお兄ちゃんになるから』
     そう、母さんが言った。
     『お兄ちゃんになる』――それは、当時の俺にとって一大事だった。つい最近、ちょうどクラスの友達が『お兄ちゃんになる』と話していたことを思い出していた。そいつの話によると、お母さんのお腹が大きくなっていて、赤ちゃんがいるらしい……そんな話を聞いていたから。
     俺は思わず母さんの腹を見た。母さんに変わりはない。でも、だんだん腹がデカくなっていったという話も聞いていた。だから確認した。
    『母さん、“にんしん”してるの?』
     その当時、妊娠、という言葉の意味を理解していたわけではない。ただ、女の人は“にんしん”して子供を“うむ”らしい……ということだけは、知っていた。
     母さんは俺の言葉に少し驚いた顔をして、親父と顔を見合わせたあと、少し寂しそうに笑う。
    『ごめんね、ちがうの』
     どうして母さんが謝るのか、わからなかった。でも続く言葉で、身体の芯がスンと冷たくなっていった。
    『琉夏くん、って覚えてる? ほら、去年の夏休みに北海道へ遊びに行ったでしょう?』
     琉夏くん――嫌でも、覚えている。
     やたら色が白くて大人しく、勉強ができて、教会の聖歌隊だかで歌を歌っていて……同じ学校にいたとしたら俺は絶対に関わらないやつだった。
     俺と同い年だからか、何かと出来の違いを比べられるのも迷惑だった。『琉夏くんは、琉夏くんは』と、アイツの名前を出されるたびに鬱陶しくて仕方なかった。
     それに最近、その『琉夏くん』のせいで、家の中がどこか落ち着かなかった。
     理由はわからなかったが、両親はやたらと小声で話したり、どこかから、電話がかかってくることが増えた。そのたびに申し訳なさそうな顔したおふくろから『ごめんね、コウ。お部屋で待っててくれる?』と、テレビのあるリビングから、自室へ行くよう促された。俺の好きなアニメや戦隊モノの番組を見ている時でも、だ。まるで邪魔者扱いだった。
     とにかく両親は、俺のいないところで『琉夏くん』の話ばかりしていて、本当に迷惑だった。
     だから、心底嫌な野朗だと思っていた。
    『アイツが、なに』
     自分の口から出た声は、思っていたよりもずっとぶっきらぼうだった。もしかしたら、怒っているようにも聞こえたかもしれない。
    『琉夏くんね、明日からうちに来るから』
    『……え?』
     腑抜けた声が出た。明日うちに来る、そう言った母さんは呆気に取られている俺を諭すように続ける。
    『明日からね、うちの子になるの……誕生日はコウの方が早いから、コウがお兄ちゃんだよ』
     突然『お兄ちゃんになれ』と言われて、そんなもの、なれるわけもなかった。
     ましてや、散々出来の違いを比べられた、いけ好かない同い年の弟ができるなんて……冗談じゃなかった。
     両親はそれ以上、事情を話そうとしなかった。だからこそ、余計に意味がわからなかった。
     なんでうちの子になるのか、どうして俺が『お兄ちゃん』にならなければならないのか――何も、わからなかった。
     そして、八歳の誕生日を迎えたばかりの俺は、それを受け入れることが出来なかった。

    『コウくん、こんにちは……』
    『弟なんていらない』
     消え入りそうな声を遮るように、乱暴に言葉を吐き捨てた。ルカは驚いたように目を見開いて、じっと俺を見つめる。俺は負けじと真っ直ぐにルカを睨み返してやった。
     目が合うとぴくりと小さな肩が揺れる。怖がるような、怯えるような瞳で、申し訳なさそうにへにゃりと笑った。でもその笑顔はすぐにしぼんで、視線は足元に落ちていった。
     ランドセルの肩ベルトを強く握りしめていた白い手に、さらに力がこもる。下唇を噛みキツく結んだ唇が、わずかに震えているのが見えた。
     そうだ。男のくせに女みたいにすぐ泣くから、余計腹が立って、嫌いだった。
     北海道に遊びに行った時、ルカを泣かせてこっぴどく怒られたことを思い出す。なんて事はない、子供同士の喧嘩だった――はずだ。
     
     それは、ルカが聖歌隊の衣装を着た写真を見たときの、俺の一言だった。
    『女みてぇ、変なの』
    『えっ、変じゃない……』
    『俺はこんなの着たいと思わない』
     
     その日は散々ルカと比べられて、心底腹が立っていた。ちょうど夏休みだったから、一学期の成績はどうだったとか、三者面談で何を言われただとか……そんな話題ばかりがのぼっていた。
     今にして思えば、あれはきっと八つ当たりだったんだと思う。どうでもいいことで、必要以上にルカにキツく当たっていた。
     初めはモゴモゴと小さな声で何か言い返していたルカは、次第に顔をくしゃくしゃに歪めてボロボロと涙を流し始めた。
     ギョッとした。泣くとは思っていなかった。
     あとはもう、よく覚えてない。気付いたら騒ぎを聞きつけた大人たちに見つかって、親父に思い切りゲンコツを食らった。

     だから、俺は反射的に、また、ルカを泣かせて親父に怒鳴られると思った。
     でも――誰も、何も言わなかった。
     思わず両親の顔色を伺うように視線を泳がすと、二人は悲しんでいるような、怒っているような……言葉では言い表せない、複雑な表情をしていた。
     ルカはというと、足元に落としていた視線をそっと上げて、口を噤んだままその場に佇んでいる。眉を垂れ下げて、困ったように微笑んでいた。けれど、その目の奥には涙が溜まっていて、それが零れ落ちないように必死に堪えているのがわかった。
     まるで、泣くことを許されていないみたいだと思った。
     ルカはキツく結んでいた口を開きかけて……けれど結局、何も言わなかった。
     その瞬間、俺だけがわるものになったような、そんな気がした。
     玄関に、張り詰めた沈黙が落ちる。
     おふくろが、やけに甘く優しい声色でルカに言う。
    『……ごめんね、琉夏くん。コウ、ちょっと機嫌が悪いみたい。ほら、上がって。今日からここがお家なんだから』
     そう促されたルカは靴を履いたまま、土間で足を止めていた。それより先に踏み込むことを躊躇っているみたいに、ただ、立ち尽くしている。そんな姿がますます空気を重くさせた。
     それまで、やり取りを黙って見ていた寡黙な親父が口を開く。
    『琥一は、部屋に戻れ』
     低く落ち着きのある声の主は、俺ではなく、ルカを見つめていた。おふくろもまた、視線の高さに合わせるようにルカの隣にしゃがみ込む。俯くルカの背中にそっと手を添えて、甲斐甲斐しく世話を焼いていた。
     ああ、俺は邪魔なんだ。
     そう思った瞬間、喉の奥がカッと熱くなった。息が、詰まる。何か言ってやろうと思ったが、言葉は何も出てこなかった。
     そのまま踵を返し、弾かれたみたいに自室へ向かって走り出す。わざと、大きく足音を鳴らしながら――せめて、自分の存在を無視出来ないように。
     思い切り音を立ててドアを閉めた。
     普段なら、すぐに部屋まで追いかけてきて『静かに閉めなさい!』と怒鳴り込んでくるおふくろが、いくら待てども来なかった。
     どうしてだかわからないけど、涙が出そうになった。
     静まり返った部屋の中で、親父の顔を、おふくろの顔を、ルカの顔を思い出す。
     あんな顔をされるくらいなら――いっそ、思い切り怒鳴られて、ぶん殴ってもらった方がよっぽどマシだ。
     心の底から、そう思った。
     
     ルカの両親が交通事故で亡くなったこと。
     その車に、ルカ自身も乗っていたこと。
     それを知ったのは、その日の夜のことだった。

      ずっと後悔している。
     あの日、ルカに『弟なんていらない』と吐き捨てたことを。
     なぁ、ルカ。
     あの時――オマエを素直に迎え入れてやれば。無理にでも手を引いて、家に招き入れてやれば。家を出て行くなんて馬鹿げた選択、しなかったんじゃねぇか?

     ずっと後悔している。
     今さらもう、遅いけど。

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    asano5han

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    多少推敲しましたが、まだベタ打ち状態なので文章色々おかしいです。すみません。
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     だから、だろうか。
     ルカが家に来た日のことは、今でもよく覚えている。
     
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     シン……と静まり返った玄関は、扉一枚を隔てて外の世界から切り離されてしまったように、冷たくて重い空気が漂っていた。
     ほんの数秒前、扉が開いていた時に見えた外の世界は、春の日差しが地面を暖かく照らしていた。柔らかな風が木の葉を揺らし、遠くから小鳥の鳴き声が聞こえてくるような、そんな麗らかな景色が広がっていた。
     それなのに。扉を閉めただけで、ここだけがその世界から取り残されたみたいに重く、重く、沈んでいる。まるで誰かが泣いたあとみたいな、冷たい空気だった。
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