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    汐田リゼ

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    汐田リゼ

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    祝やは黒開催!記念(もはや後夜祭)に今年の赤黒の日記念に上げた小説の続編をお届けします🍀これだけでも読めますが、未読の方は火神君サイドから読んで頂けると楽しみがちょっと増えるかもしれません😉火神君に「赤司君と別れた」と告げた黒子君の真意とは?な話。ちなみに公開日は未定ですがあと2話増える予定です〜😇ワイもやは黒行きたかった…😭

    『馬鹿にできない馬鹿騒ぎ』―side:Kuroko―「もしもし、火神君?久しぶりですね、どうしました?――えっ、こっちに帰って来るんですか?」
     三月末日の夜のこと。自宅でのんびりしていた黒子は相棒から突然かかってきた電話を受けていた。
    「ちょっと待ってくださいね。赤司君」
    「ん?どうした?」
     黒子は火神に断りを入れると受話器から耳を離し、背後にあるキッチンでせっせと晩ご飯の支度をしていた赤司に声をかける。火神に会うついでにストバスに誘われたので、赤司を誘おうと思ったのだ。
    「火神君がこっちに帰って来るそうなんですが明日、キミ何か用事ありますか?」
    「いいや?特に何もないよ。ストバスでもするのかい?」
     ひとこと聞いただけなのに赤司は黒子が言いたいことを察したのか、全てを言い終わる前に問い返して来たので黒子は首肯する。
    「いいね。他にも声をかけておくよ」
     そしてありがたいことに赤司が人集めを買って出てくれた。料理をしながらスマホを取り出した彼の姿を見て、電話に戻りなよ、と言われているような気分になる。そんな彼にひとこと礼を言い、黒子はそのまま通話に戻った。
    「ありがとうございます。――すみません火神君、赤司君が声をかけてくれるそうなのでいつもの場所で待ち合わせしましょう。――」

    「――じゃあ、また明日」
    「終わった?」
    「はい」
     しばらく話し込んだ後、電話を切った黒子に赤司から現状報告がなされる。
    「全員に声をかけたが、さっそく黄瀬と桃井から返信があったよ。ふたり共、先輩にも声をかけるとあった。それと黒子、明日のことだが――今年は誰にやるか決めたかい?」
    「? ……あ、忘れてました。ちなみにキミは誰にするんですか?」
     ところが彼から急に不明瞭な質問を投げかけられ、黒子はそれに一瞬だけ首を傾げるも『今年』という言葉にハッとする。いけない、そういえばそうだった。
    「黛さんに。どうせだから決行するついでにストバスに巻き込むとするよ。それに火神にはまだやってなかっただろう?」
    「え、まさか火神君にやれってことですか?正直ちょっと彼相手にアレはやりづらいんですが……」
     赤司がこともなげに言うので黒子は、ええ……と眉を顰める。そして同時に抱いた感情といえば、黛さん可哀想に、という盛大に巻き込まれるであろう赤司の先輩こと黛への哀れみ。自分のせいでたった一瞬でも気を揉むハメになる相棒への罪悪感。そして、人の苦労も知らないで赤司君楽しんでるな、という恋人へのちょっとした不満。
     ひと足早く四月にめくられた壁掛けカレンダーにある1の数字と、どこか楽しそうにしている赤司を眺めながら、火神の顔を思い浮かべて黒子はため息をついた。


     『アレ』というのは恋人になった際にふたりが決めた約束事のようなもので、エイプリルフールに『恋人と別れた』というウソをつくというもの。
     黒子からしてみれば、ハッキリ言ってウソをつくのは得意ではないし良い気だってしない。内容が内容なのでなおさらだ。
     それでもなお毎年のように続けている理由は、エイプリルフールについたウソはその一年は叶わないというジンクスにあやかり、もうひとつ『互いにウソはつかない』という矛盾めいた約束事を守るためだ。



     翌日。
     待ち合わせ場所で火神が到着するのを待つ間、黒子は赤司と例の約束を交わした日のことを思い出していた。


    「約束事を決めようか。そうだな……――お互いに対して嘘はつかない、これはどう?」
    「ウソ……ですか?」
     赤司の言葉に黒子は首を傾げる。それも今しがた、赤司から告白を受けたばかりだから余計に戸惑った。
     わざわざそんなことを口にせずとも、良好な関係を築くためには嘘をつかないのは当然のことではないだろうか。そんな黒子の心情を察してか赤司は、そう、と頷き言葉を続ける。
    「嘘も方便、優しい嘘なんてよくいうけど、オレにとっては嘘は嘘でしかない。たとえ相手を思ってついた嘘でも、相手が悲しむなら結局互いが苦しむだけだろう?――残念ながらオレは何事も白黒つけないと気が済まない質らしい。だから優しい嘘で誤魔化されるくらいなら、残酷な現実をオレは選ぶ。それだけさ」
     そんな赤司の言葉を聞きながら、彼らしい理由だと黒子は思った。そしてそれは黒子も同意見だ。
     逃げないと決めたあの日から、現実から目を逸らすことはしないと黒子は誓っている。その誓いがなければこうやって彼と再び――それ以上に深く心を通わせることはできなかった事実があるからだ。
    「それに黒子が嘘をつく時は、決して私利私欲のためではなく相手を思ってのことだろうが――放っておくと取り返しがつかないような、黒子の身に危険が及ぶようなレベルの時だろうから。抑止も兼ねて」
     しかし赤司に賛同する一方で、彼は自分のことを買い被りすぎではないだろうかと思ってしまう。
     当時は自分の心に余裕がなかったと言えど、過去に桃井を泣かせてしまうようなウソをついてしまっているのだ。だからこそ赤司の言い分も理解できるし、黒子だってあんなウソは二度とつきたくない。それに赤司にウソをついたところで、鋭い彼にあっさり見抜かれてしまうのが目に見えている。それこそ百害あって一利なし、だ。
    「……そんなに信用ないですか?」
    「ジャバウォック戦の時、無鉄砲に飛び出して怪我を負ったのは誰だったかな?」
     だが黒子は不満げにひとこと問う。これから親密な関係でいようというのに、不信感を抱かれているのは気分がいいものではない。それ以上に関係の悪化もありうる。
     しかし、忘れたとは言わせないよ、という赤司からの怒りに近い無言の圧力を感じて黒子は口を噤んだ。これではウソどころか反論さえ許されない状況だ。
    「無論オレだって言ったからには守るさ。――これでも黒子に隠していたことはあれど、キミに嘘をついたことはこれまでに一度もないけどね」
    「隠していたこと?」
     堂々と言い放つ赤司に黒子は尋ねた。
     誰にだって隠したいことがひとつやふたつくらいはあるだろう。しかし場合によっては隠し事はウソに直結する。そのウソに繋がりかねない彼の隠し事が、一体どんなものか気になる。
    「うん。オレが二重人格だったことと、黒子のプレイスタイルが確立してからシュートやドリブルを身につけさせなかった理由。それに――キミへの想い、かな。そもそもの話、オレには知られて困るようなことは何もないが、最後のは今やっと伝えられた。だからこれで隠し事もなくなったけどね」
     すると彼は頷き、素直に答えてくれた。
     ふたつはとんでもない隠し事だが、確かに彼の口からその事実は明かされている。だが最後のは本当にずるい。どこか安心したような、それでいて不敵な笑みを浮かべる赤司に黒子は心を奪われてしまった。
     しかし。
    「……エイプリルフールは?」
     ポロッと零したそれは、無意識下から発せられた言葉。
     そんな黒子の問いに赤司は一瞬キョトンとした。だが言われたことを理解すると、黒子はそういうのに乗るタイプ?ハワイ遠征の時に青峰にからかわれていただろう?だから黒子は騙すより騙される方だと思っていた、と笑われてしまった。
    「そうだな、その日くらいはいいんじゃないか?ただ、黒子には嘘はつかないけどね。約束だから」
    「ボク……には?ってことは」
     笑顔のままの赤司に黒子は引っかかりを覚える。その言い方をするということは、自分以外の誰かにはウソをつくということだろうか。
     矛盾していないか?と思っていたのがどうやら顔に出ていたらしい。赤司は頷く。
    「さすが黒子、察しがいいね。さっきも言っただろう?お互いに『対して』嘘をつかないと。だからエイプリルフールは黒子に嘘をつかない代わりに他の誰かに嘘をつくことにする。その内容もあらかじめ決めておこうか。そうだな……――うん。『恋人と別れた』とかね」
     ちょっとした屁理屈を並べ、さらに別れを見据えるような赤司の物言いに黒子はギョッとする。ウソをつくならせめて別のものにして欲しい。
     未来志向の強い彼らしいと言えばそれまでだが、告白されたそばからそんな話題に発展するとは思いもよらず、黒子は言葉を失った。
     だが、赤司はそんなことなどお構いなしに。
    「エイプリルフールについた嘘はその一年は叶わない、というジンクスがあるそうだよ。そのジンクスにあやかりたいほど、オレのお前への気持ちは軽いものじゃないってことさ」
     彼の減らず口は博識なせいで拍車がかかる。そんな黒子が初耳な事実に、そうなんですか?と問うよりも早く。彼が繰り出す熱烈かつストレートな言葉が、黒子の感情をいとも容易くときめきへと塗り替えた。
    「……それって屁理屈じゃないですか?」
     しかし、ときめいた気持ちを素直に表すなんて悔しいし恥ずかしい。黒子は平然を装って咎めるも、赤司は心底楽しそうにくすくす笑うばかり。
    「そうだな。――オレはただ、黒子にだけは誠実でいたいだけだよ」


     いわゆる、幸せオーラ全開とはこういうことをいうのだろうか。普段はクールな彼がこうも情熱的に、惜しげも無く愛情表現をしていると思うと、屁理屈なんてどうでもよくなってきてしまう。
     それにしても、笑顔でさらりと口説き文句を垂れるなんて本当に恥ずかしいひとだ。今から心臓が持つのかハラハラしていては先が思いやられる。
     どうやら、とんでもない人たらしと恋人になってしまったようだ。


     結論から言えば黒子も赤司と同じウソをエイプリルフールにつくことに決めた。
     もちろん赤司の言い分に賛同してのことなのだが、最もな理由としては――黒子は無理にやらなくていいよ?という彼からのひと言。それにカチンと来てしまった。
     その言葉は黒子への気遣いなのか、はたまた挑発だったのか真意はわからない。しかし見くびられては困る。たとえそれが遊びだったとしても、そんなことで身を引くほど黒子が抱える彼への気持ちは軽くない。
     だからこそ、これは恋人への想いの強さを証明する行事と言ってもいい。そのおかげなのか今も関係は良好だ。緑間の座右の銘に倣うなら、人事を尽くした結果がジンクス通りの天命をもたらしている。

     そんなこんなで恋人として彼と迎えた三回目の春――今年もこの瞬間がやって来た。

    「さて、やりますか。――火神君、こっちです!」
     そうこうしてる間に遠くから相棒がこちらに向かってやって来る。
     黒子はひっそりと気合いを入れ、彼に手を振って出迎えた。火神に会うのは久々だが、高校時代と変わらない距離感で互いに軽く挨拶を交わす。
    「火神君、お昼まだですよね?コートに行く前に腹ごしらえしませんか?」
    「おう、いいな!……あ、でもいいのか?みんな来てるんだろ?」
     そして黒子にとって一世一代と言ってもいい大嘘を彼につくために、腰を落ち着けられる場所へ誘導する。それも、火神が待ち合わせまでに昼を食べる余裕がないことを昨夜の電話で知ったからだ。これを生かさない手はない。
     そもそも大食漢の火神が食事抜きに、しかもキセキの世代が揃うストバスに向かう訳がない。案の定、彼は黒子の提案に乗ってきた。
     しかし、律儀な彼は今頃集まっているであろう面々を気遣うので、問題ないことを伝える。
    「みんなには『差し入れを買ってから合流する』と事前に伝えてあるので、少しくらい大丈夫ですよ。着いて早々、火神君には悪いですが結構な人数が集まるのであとで手伝ってください。それに色々と積もる話もありますし、大切な話もありますから――そうだ、そこのファミレスにしましょうか」
    「そっか、いいぜ!――さぁて、何食おっかな〜」
     そもそもの話、問題ないのは当然のこと。ここまで赤司と描いたプラン通りなのだ。もちろん周囲への根回しも抜かりなく、以前にふたりに騙された面々――特に黄瀬や実渕あたりは、黒子と火神が遅れる理由に察しがついていることだろう。
     しかし火神は依然として黒子の策略に気づく様子もなく、おまけに『大切な話』というワードも完全にスルー。長時間のフライトで相当腹を空かせているのか、入店する前からメニューに思いを馳せている始末だ。
     そんな無邪気な火神を騙すのは気が引けるが、あと十五分もしないうちにタイムアップの正午。赤司も今頃、適当に言いくるめてストバスに引きずり出した黛を騙していることだろう。あの黛の反応が見れないことは少し残念だが、そろそろ自分もジンクスを叶えに動かなければ。
    「すみません、火神君」
     ファミレスの自動ドアを先に通った火神の背中を見つめながら。呟いた黒子の声は店員のいらっしゃいませ!という声に掻き消されたのだった。
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    汐田リゼ

    DONE祝やは黒開催!記念(もはや後夜祭)に今年の赤黒の日記念に上げた小説の続編をお届けします🍀これだけでも読めますが、未読の方は火神君サイドから読んで頂けると楽しみがちょっと増えるかもしれません😉火神君に「赤司君と別れた」と告げた黒子君の真意とは?な話。ちなみに公開日は未定ですがあと2話増える予定です〜😇ワイもやは黒行きたかった…😭
    『馬鹿にできない馬鹿騒ぎ』―side:Kuroko―「もしもし、火神君?久しぶりですね、どうしました?――えっ、こっちに帰って来るんですか?」
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    「ちょっと待ってくださいね。赤司君」
    「ん?どうした?」
     黒子は火神に断りを入れると受話器から耳を離し、背後にあるキッチンでせっせと晩ご飯の支度をしていた赤司に声をかける。火神に会うついでにストバスに誘われたので、赤司を誘おうと思ったのだ。
    「火神君がこっちに帰って来るそうなんですが明日、キミ何か用事ありますか?」
    「いいや?特に何もないよ。ストバスでもするのかい?」
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