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    ▶︎古井◀︎

    DONE横書きで一気に読む用
    見えるモさんと祓えるチェのチェズモク洒落怖話
    「あ、」
     それに気付いてしまった瞬間、モクマは気付かなければよかったと心の底から後悔した。
     日の入り、夕暮れ、黄昏時――あるいはマイカでは逢魔が時、なんて呼んだりもする、そんな時間。
     モクマはとある雑居ビルの前で、別件で離れた相棒が戻ってくるのを待っていた。立ち並ぶ無数のビルが照り返す西日が妙にまぶしい。細めた目でふらふらと視線をさまよわせながら、ただ眼前の交差点を行き交う人の流れを追っていた。なんてことはない、相棒が来るまでのただの暇つぶしだ。本当に、それだけのつもりだった。
     最初に違和感を覚えたのは、横っ腹に突き刺さるような視線の濃さだった。多少ハデな風体をしていることもあって、モクマが街中でじろじろと見られること自体は珍しくもない。そんなときは大抵、その視線の主を見つけて目を合わせて、にっこり微笑んでやれば気圧されたようにその無礼者はいなくなるのだ。だからいつも通り、同じように対処しようと考えて、モクマは視線の大元を探してしまった。
     しかし今回に限っては、その行動は完全に誤りだった。探してはいけなかったのだ。そうとも知らず、モクマは送られ続けている視線と気配を手繰って周 5795