Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    高間晴

    @hal483

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 387

    高間晴

    ☆quiet follow

    字書きだって洒脱モを書きたかった……というだけのアレ。チェズモク。

    #チェズモク
    chesmok
    ##BOND

    ■オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ


     それは突然の雨だった。
     昨日、チェズレイとモクマの二人はとある国に拠点を移した。モクマがそのセーフハウスの近辺を、どんな店があるのか見て回っていた。
     ――あそこのラーメン屋、うまそうだな。チェズレイはきっとついてきてくれないだろうけど。
     なんて思いながら歩いていく。するとみるみる空が曇って雨が降り始めた。
     まずい、傘なんて持ってないぞ。
     モクマはとっさに青藍の羽織についていたフードをかぶると、慌てて下駄を鳴らしながらセーフハウスに向かってアスファルトを駆け抜けた。雨はどんどん激しさを増していく。確かにスコールが多い国だとは聞いていたけれど。顔に大粒の雨のしずくが次々と当たるのがわかる。
     約二十分の後。セーフハウスの玄関を開けて駆け込むと、チェズレイが慌てて出迎える。
    「モクマさん……! いま迎えに行こうとしていたところで――」
    「ただいま、チェズレイ。いや~いきなり降り出すからびっくりしちゃった」
     言いながらフードを脱ぐと、羽織がだいぶ雨を吸って重くなっているのに気づく。全身濡れ鼠だ。「待っていてください」と言い置いてチェズレイが浴室の方へ引っ込む。次に出てきたその手にはバスタオルがあった。モクマは玄関で下駄もそのまま、マフラーを外して羽織を脱ぐ。
    「今、お風呂に湯を張っていますので」
    「あんがとね」
     モクマはバスタオルを受け取って髪を拭く。下に着ていた柄シャツもぐっしょり濡れている。しょうがない、脱ぐか。そう思ってモクマはシャツのボタンに手を伸ばす。
    「あれ」
     しかし雨に濡れた寒さのせいか、手が震えてボタンが上手く外れない。見かねたチェズレイが手袋を外すと、モクマの胸元へ手をのばす。ボタンを、ひとつ、ふたつ、みっつ、と外す。もとから胸元の空いていたシャツは、それだけで簡単に脱がされてしまう。
    「悪いね、チェズレイ」
    「いいえ。――私の手でその肌を暴かれるモクマさん。なかなか昂ぶるシチュエーションじゃないですか」
     そう言いながらチェズレイは素手でモクマの厚い胸板を撫で、割れた腹筋をなぞると左肩の銃弾の痕に唇で触れる。すると古傷の痛みを思い出してモクマはかすかに震える。
    「……いやぁ参ったな。おじさん食べられちゃう?」
     かぶったバスタオルの下で上目遣いに茶化して笑えば、チェズレイは目を細めて舌なめずりをする。それはこの男が心に飼っている獣が表出したものに見えた。モクマはときおり見せるチェズレイのこの顔が嫌いではない。むしろ好ましいとさえ思っている。
    「そうですねェ……あなたがお風呂で充分に温まった後に、いただくとしましょうか」
     そう告げてモクマの頭のバスタオルを取り、体を屈める。泥跳ねで汚れた足元を拭き始めた。水分と泥を拭い去って、ようやくモクマは下駄を脱ぐ。ぺたぺたと素足でフローリングの床を歩いて、手近にあった椅子に腰掛ける。チェズレイはモクマの脱いだ衣服と汚れたバスタオルを抱えて洗面所の方へ向かった。
    「チェズレイ。風呂、あとどんくらい?」
    「十分くらいですかね」
    「そっか。じゃあこっち来て」
     その声にチェズレイが怪訝そうな顔のままでモクマの前までやって来る。にやりと笑うと、モクマはチェズレイのベルトに手をかけた。抵抗の手が伸びてくる前に金具をカチャカチャいわせながら外してしまうと、チェズレイの前に膝立ちになる。
    「十分で、いけるかな?」
     必然的に上目遣いでの挑発的なその言葉に、チェズレイは「あァ……」と熱い吐息混じりの声をもらす。外には暴風雨が吹き荒れているが、二人もまたその中にいるようだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    高間晴

    DOODLETLに花見するチェズモクが流れてきて羨ましくなったので書きました。■夜桜で一杯


     新しく拠点を移した国では今が桜の花盛りだそうだ。それを朝のニュースで知ったモクマは「花見をしよう」と期待たっぷりに朝食を作るチェズレイに笑いかけた。
     日が沈んでからモクマはチェズレイを外へ連れ出した。桜が満開の公園へ行くと、ライトアップされた夜桜を楽しむカップルや友人連れの姿がちらほら見える。一箇所、満開の桜の下が空いていたので、そこにビニールシートを広げて二人で座る。持ってきたどぶろくの一升瓶からぐい呑みに注ぐとモクマはチェズレイに渡す。続けて自分の分もぐい呑みに注ぐと、二人で乾杯した。
    「や~、マイカから離れてまた桜が見られるとは思ってなかったよ」
    「それはそれは。タイミングがよかったですね」
     モクマがいつにも増して上機嫌なので、チェズレイも嬉しくなってしまう。
    「おじさん運がなくてさ。二十年あちこち放浪してたけど、その間に桜の花なんて一回も見られなかったんだよね」
     でもそれもこれも全部、なんもかも自分が悪いって思ってた――そう小さな声で呟いてぐっと杯を干す。
     このひとはどれだけの苦しみを抱えて二十年も生きてきたんだろう。事あるごとに何度も繰り返した問い 1240