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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    字書きだって洒脱モを書きたかった……というだけのアレ。チェズモク。

    #チェズモク
    chesmok
    ##BOND

    ■オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ


     それは突然の雨だった。
     昨日、チェズレイとモクマの二人はとある国に拠点を移した。モクマがそのセーフハウスの近辺を、どんな店があるのか見て回っていた。
     ――あそこのラーメン屋、うまそうだな。チェズレイはきっとついてきてくれないだろうけど。
     なんて思いながら歩いていく。するとみるみる空が曇って雨が降り始めた。
     まずい、傘なんて持ってないぞ。
     モクマはとっさに青藍の羽織についていたフードをかぶると、慌てて下駄を鳴らしながらセーフハウスに向かってアスファルトを駆け抜けた。雨はどんどん激しさを増していく。確かにスコールが多い国だとは聞いていたけれど。顔に大粒の雨のしずくが次々と当たるのがわかる。
     約二十分の後。セーフハウスの玄関を開けて駆け込むと、チェズレイが慌てて出迎える。
    「モクマさん……! いま迎えに行こうとしていたところで――」
    「ただいま、チェズレイ。いや~いきなり降り出すからびっくりしちゃった」
     言いながらフードを脱ぐと、羽織がだいぶ雨を吸って重くなっているのに気づく。全身濡れ鼠だ。「待っていてください」と言い置いてチェズレイが浴室の方へ引っ込む。次に出てきたその手にはバスタオルがあった。モクマは玄関で下駄もそのまま、マフラーを外して羽織を脱ぐ。
    「今、お風呂に湯を張っていますので」
    「あんがとね」
     モクマはバスタオルを受け取って髪を拭く。下に着ていた柄シャツもぐっしょり濡れている。しょうがない、脱ぐか。そう思ってモクマはシャツのボタンに手を伸ばす。
    「あれ」
     しかし雨に濡れた寒さのせいか、手が震えてボタンが上手く外れない。見かねたチェズレイが手袋を外すと、モクマの胸元へ手をのばす。ボタンを、ひとつ、ふたつ、みっつ、と外す。もとから胸元の空いていたシャツは、それだけで簡単に脱がされてしまう。
    「悪いね、チェズレイ」
    「いいえ。――私の手でその肌を暴かれるモクマさん。なかなか昂ぶるシチュエーションじゃないですか」
     そう言いながらチェズレイは素手でモクマの厚い胸板を撫で、割れた腹筋をなぞると左肩の銃弾の痕に唇で触れる。すると古傷の痛みを思い出してモクマはかすかに震える。
    「……いやぁ参ったな。おじさん食べられちゃう?」
     かぶったバスタオルの下で上目遣いに茶化して笑えば、チェズレイは目を細めて舌なめずりをする。それはこの男が心に飼っている獣が表出したものに見えた。モクマはときおり見せるチェズレイのこの顔が嫌いではない。むしろ好ましいとさえ思っている。
    「そうですねェ……あなたがお風呂で充分に温まった後に、いただくとしましょうか」
     そう告げてモクマの頭のバスタオルを取り、体を屈める。泥跳ねで汚れた足元を拭き始めた。水分と泥を拭い去って、ようやくモクマは下駄を脱ぐ。ぺたぺたと素足でフローリングの床を歩いて、手近にあった椅子に腰掛ける。チェズレイはモクマの脱いだ衣服と汚れたバスタオルを抱えて洗面所の方へ向かった。
    「チェズレイ。風呂、あとどんくらい?」
    「十分くらいですかね」
    「そっか。じゃあこっち来て」
     その声にチェズレイが怪訝そうな顔のままでモクマの前までやって来る。にやりと笑うと、モクマはチェズレイのベルトに手をかけた。抵抗の手が伸びてくる前に金具をカチャカチャいわせながら外してしまうと、チェズレイの前に膝立ちになる。
    「十分で、いけるかな?」
     必然的に上目遣いでの挑発的なその言葉に、チェズレイは「あァ……」と熱い吐息混じりの声をもらす。外には暴風雨が吹き荒れているが、二人もまたその中にいるようだった。
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。結婚している。■いわゆるプロポーズ


    「チェーズレイ、これよかったら使って」
     そう言ってモクマが書斎の机の上にラッピングされた細長い包みを置いた。ペンか何かでも入っているのだろうか。書き物をしていたチェズレイがそう思って開けてみると、塗り箸のような棒に藤色のとろりとした色合いのとんぼ玉がついている。
    「これは、かんざしですか?」
    「そうだよ。マイカの里じゃ女はよくこれを使って髪をまとめてるんだ。ほら、お前さん髪長くて時々邪魔そうにしてるから」
     言われてみれば、マイカの里で見かけた女性らが、結い髪にこういった飾りのようなものを挿していたのを思い出す。
     しかしチェズレイにはこんな棒一本で、どうやって髪をまとめるのかがわからない。そこでモクマは手元のタブレットで、かんざしでの髪の結い方動画を映して見せた。マイカの文化がブロッサムや他の国にも伝わりつつある今だから、こんな動画もある。一分ほどの短いものだが、聡いチェズレイにはそれだけで使い方がだいたいわかった。
    「なるほど、これは便利そうですね」
     そう言うとチェズレイは動画で見たとおりに髪を結い上げる。髪をまとめて上にねじると、地肌に近いところへか 849

    高間晴

    MAIKINGチェズモクの話。あとで少し手直ししたらpixivへ放る予定。■ポトフが冷めるまで


     極北の国、ヴィンウェイ。この国の冬は長い。だがチェズレイとモクマのセーフハウス内には暖房がしっかり効いており、寒さを感じることはない。
     キッチンでチェズレイはことことと煮える鍋を見つめていた。視線を上げればソファに座ってタブレットで通話しているモクマの姿が目に入る。おそらく次の仕事で向かう国で、ニンジャジャンのショーに出てくれないか打診しているのだろう。
     コンソメのいい香りが鍋から漂っている。チェズレイは煮えたかどうか、乱切りにした人参を小皿に取って吹き冷ますと口に入れた。それは味付けも火の通り具合も、我ながら完璧な出来栄え。
    「モクマさん、できましたよ」
     声をかければ、モクマは顔を上げて振り返り返事した。
    「あ、できた?
     ――ってわけで、アーロン。チェズレイが昼飯作ってくれたから、詳しい話はまた今度な」
     そう言ってモクマはさっさと通話を打ち切ってしまった。チェズレイがコンロの火を止め、二つの深い皿に出来上がった料理をよそうと、トレイに載せてダイニングへ移動する。モクマもソファから立ち上がってその後に付いていき、椅子を引くとテーブルにつく。その前に 2010

    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。とある国の狭いセーフハウス。■たまには、


     たまにはあの人に任せてみようか。そう思ってチェズレイがモクマに確保を頼んだ極東の島国のセーフハウスは、1LKという手狭なものだった。古びたマンションの角部屋で、まずキッチンが狭いとチェズレイが文句をつける。シンク横の調理スペースは不十分だし、コンロもIHが一口だけだ。
    「これじゃあろくに料理も作れないじゃないですか」
    「まあそこは我慢してもらうしかないねえ」
     あはは、と笑うモクマをよそにチェズレイはバスルームを覗きに行く。バス・トイレが一緒だったら絶対にここでは暮らせない。引き戸を開けてみればシステムバスだが、トイレは別のようだ。清潔感もある。ほっと息をつく。
     そこでモクマに名前を呼ばれて手招きされる。なんだろうと思ってついていくとそこはベッドルームだった。そこでチェズレイはかすかに目を見開く。目の前にあるのは十分に広いダブルベッドだった。
    「いや~、寝室が広いみたいだからダブルベッドなんて入れちゃった」
     首の後ろ側をかきながらモクマが少し照れて笑うと、チェズレイがゆらりと顔を上げ振り返る。
    「モクマさァん……」
    「うん。お前さんがその顔する時って、嬉しいんだ 827