魔法舎の中庭。植え込みの陰に隠れて、オーエンは湿った土に尻をつけて膝を抱えていた。遠くで自分を呼ぶ声に耳をすませながら、じっとしている。靴先を見つめながら、なんとなく、自分はかつて長い間こうしていたような気がした。
オーエン、と名前を呼びながら、コツコツとブーツの音が近づいてくる。オーエンは身動きせずに声が通り過ぎるのを待った。しかし、気配はそのまま近づいて、がさがさと植え込みをかき分け始めた。
「あ! こんなところに隠れてたのか、オーエン」
草葉をかき分けて、太陽を背に現れた男が落とした陰は、オーエンの身体をすっかり隠した。膝を抱えたまま、オーエンはジロリと男の影を睨み上げた。
「なに、騎士様。僕を双子に突き出そうってわけ」
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