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    bluelysky24

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    甘味王国ドーナツ衣装でいちゃいちゃしている新葵

    あまいまる、とおいまる。


    TSUKINO Sweets Kingdom、通称甘味王国のグッズビジュアルのひとつであるドーナツ衣装の撮影を終えた新と葵。
    この撮影の後すぐにラジオ収録の仕事がある駆と恋をラジオ局に送り届けてから自分たちを迎えに来るという月城からの指示により、ふたりは楽屋へ戻ると横並びに座り、小道具として使われた本物のドーナツを食べながら他愛のない話をしたりしなかったり、思いがけず訪れたのんびりとした時間を満喫していた。
    「は〜、美味かった。やっぱストロベリーリングは正義だな」
    「はいはい。ドーナツ久しぶりに食べたけど、美味しかったな、ハニーディップ」
    いちごチョコレートと油にまみれた幸せな指を舐めながら満足げに呟く新を穏やかな表情で見ながら、葵はテーブルに置かれたウェットティッシュを何枚か取り出し新へと手渡した。
    「ありがと、葵」
    「どういたしまして。……あ、新」
    「ん?」
    「いちごチョコ付いてるよ」
    「どこ? 取って、葵」
    「もー……はい、取れた」
    呆れたような声を返しつつ、葵は新の口元を指先で軽く拭うと、そのままいちごチョコの欠片をぱくりと自分の口に収めた。
    「……」
    「? どうしたの?」
    自分を見つめる目の前の薄墨色の瞳がわずかに見開かれ、驚きの色に染まっているのに気づいた葵がそう問うと、新は首を横に振った。
    「いや……あ、葵も食べかす付いてる」
    「え、どこどこ?」
    「取ってやるから、そのままな?」
    そう言うと新は、驚いた表情を浮かべたまま動きを止めた葵の唇の端をぺろりと舐めた。
    「!!」
    「さっき葵にチョコ取ってもらったから、お返し」
    「……え……あ……」
    「はちみつの味がする。ハニーストロベリーリングだな」
    舌をしまいながらの新の言葉に、葵は思わず声を上げた。
    「お、俺はちゃんと指で取った!!」
    「え、問題そこ?」
    「そこ大事だから!」
    「でも葵だって、俺の口から取ったいちごチョコそのまま食べただろ? それはいいの?」
    「……え?」
    「え?」
    どうやらさっきの葵の行動は無意識だったらしい。二人の間に、いつもとは違う居心地の悪い沈黙が流れる。
    「お、俺、そんなことしてた?」
    「してたぞ。それは間接キスにはならないのか、葵くん?」
    「う、それは……」
    新の言葉に、いちごのように真っ赤に染まっていく葵の頬。そのまま下を向いて黙り込んでしまった。
    少しばかりからかいすぎたか。そう思いながら葵の顔を覗き込んだ新の動きがはたと止まる。
    「……何だか葵じゃないみたいだ」
    「え?」
    「眼鏡」
    着替えるよりも先にドーナツを食べたため、新も葵も衣装のままだ。撮影のときにはさほど気にならなかったのだが、イメージカラーの水色に彩られた丸いフレームの眼鏡を掛けた葵の姿は新にとってかなり新鮮だ。
    新の言葉に不思議そうな面持ちで顔を上げる葵。新も同じく顔を上げ、改めてふたりは正面から向き合った。
    「それを言うなら新だってそうだよ。俺たちどっちも目がいいから、眼鏡なんて掛けたことなかったもんね」
    「確かに。ドラマの役とかでもないしな」
    まじまじと見つめれば見つめるほど募る違和感。
    その理由は一体何だろうか。
    目の前にいるのは確かに同じユニットのメンバーであり、年中組コンビの相方であり、幼なじみの葵だというのに。新が眉根を寄せながら考えていたその時だった。
    かつん
    知らず知らずのうちにお互い顔を近づけあっていたらしい。無機質な衝撃音がふたりきりの部屋に鳴り響いた。
    「おお」
    「わっ」
    「……そういえば、眼鏡掛けてたんだったな」
    「だね……。掛け慣れてないから、すっかり忘れてたよ」
    互いに照れくさそうに笑い合った後、それぞれの視線が今度は意思を持って絡み合う。
    「……葵」
    「……うん」
    「キスしたい」
    「……うん。俺も」
    「眼鏡、外していい?」
    「……うん。新も、ね?」
    こんなにも薄いレンズなのに、その壁に隔てられた瞳が、お互いの距離さえも、どこかぼんやりと遠くに感じる。それが違和感の正体だろうか。
    新は葵の頬へ手を伸ばすと細いテンプルに指を掛け、まっすぐに自分の方へと引いて水色のフレームの眼鏡を外す。現れた澄んだ青空のような瞳が、何にも阻まれることなく自分の姿を映している。
    ああ、やっと顔を見れた。新はなぜかそんなことを思った。
    新が葵の眼鏡をテーブルの上にそっと置くと、同じように新の眼鏡を外そうと伸びてきた葵の両手。新はその片方を素早く捕まえると、自分の名前を呼ぼうと開きかけた葵の唇を自分の唇で塞いだ。
    戸惑いに見開かれた瞳を見つめ、握りしめた手に力を込めると、やがて瞼がゆっくりと閉じられる。
    触れ合う唇、零れ落ちる吐息、絡め合った指先、そのぬくもりの何もかもが愛おしくて、眩暈がしそうだった。
    やがて、名残惜しげにちゅっと音を立てて新が唇を離すと、ゆるゆると目を開けた葵が目元を淡く染めながらも不満げな表情を見せた。
    「新も眼鏡外してって言ったのに」
    「うん。でも我慢できなかった。ごめん」
    葵の言葉を受けた新の口元が嬉しそうに緩む。その反応に、葵は「……もう……」とこぼしながら、今度こそと新の顔からオレンジ色のフレームの眼鏡を外した。
    遮るもののなくなったクリアな世界に、葵の姿がより際立つ。新は葵の頬から輪郭へとなぞるようにゆっくり親指を滑らせ、それはやがて唇へと辿り着いた。
    「葵」
    「ん?」
    「もう一回」
    「……うん。俺も、もう一回……したい」
    葵が手にしている眼鏡をテーブルへ置いたのを見届けると、新は葵の頬を両手で柔らかく包み込み、もう一度口づけた。
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