未来予想図(プロポーズ)「厚生省に上がったら、一緒に住まないか?」
狡噛がそう言ったのは、俺が部下の文句を言いながらランチを口に運んでいた時のことだった。俺は少しの間ぼうっとした。それは少し考えにくいように思えたからなのだが、何年もずるずると学生時代から付き合っていて、先のことを考えないのも、そう言われればおかしいような気もする。
「それは友人として? 恋人として? それとももっと深い間柄として?」
公安局のランチスペースじゃなく、外の店を選んだのはこれか、と俺は思う。狡噛は少し赤い顔をしていて、それは寒空の元可愛らしく俺に映った。これじゃあまるでプロポーズを催促しているみたいだな、なんて思う。恋人としてじゃなく、もっと先に進みたいっていうんなら俺だってやぶさかじゃない。俺は魚のフリッターを食べる。狡噛はパンをちぎる。プロポーズみたいなものは何度もされているが、直接こんなふうに言われようとしていたのは初めてのことだった。最近は血生臭い事件が多くて、俺たちは駆り出されてばかりだったし。
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