初めて話したあの夜.
アイツと初めて話したのは、そう、セブンスヘブンが再開した後の、
奴ら(クラウド達)の宴の席だった。
始めこそ、俺はクラウドとなんでもない復興の経過や、力を借りたい事、仕事を持ちかけたり
好いた惚れたの他愛のない話をいつものように話していた訳だったのだが。
途中から、酒の回りが思ったよりも早く俺は少し寝てしまっていたらしかった。
「・・・んぁ?何時??」
目が覚めた時は宴も終盤だったのか、歳の深い奴らは帰り支度をしているようだった。
そして、心配そうにティファ
この店の切り盛りをしているクラウドの仲間の彼女が俺様の顔を覗き込んでいた。
「ぅお、大丈夫だ、と。
あんまり俺の近くにこないでくれよ、と。
アンタのボディガードが怖いんだぞ、と。」
マジで、とばっちりで追い払われたら溜まったもんじゃない。
俺はそう思いながら席を立った。
しかし、その自分の視界がグラっと傾く。
だいぶ酒も抜けただろう、と油断していた。
危ない、と身構えたその時、視界を朱が掠めた。
「大丈夫か?」
肩をしっかりと支えられ、事なきを得た俺は
「サンキュ、と」
と軽く礼を言う。
実はこの男とまともに会話という会話をしたことがない俺は少し対応に困っていた。
「タークスが酒に飲まれるとは、らしくないな。私でよければ話を聞こう。
これでも昔はタークスで経験を積んだものだ。」
フ、と静かに笑みをこぼすと、彼は長いマントを整えながらカウンターの隣に腰掛けた。
俺は、なんとなく、それもそうか、と妙に納得を覚えたのと、今日は本当に疲れていたのも事実だったしでこの男の言葉に甘えることにした。
「つまり、八方塞がりだったんだぞ、と。相棒も手が塞がってるし、俺のせいで危険に晒すところでさ…」
話してみると、不思議と落ち着く奴だった。
物腰は落ち着いているし、何より経験者である事もそうだが、自分より歳上という事実も相まって
話は尽きなかった。
しかもかなり酒が強い。
そんなに話す方じゃない性格なようで、
自分の事を世話してくれた人間のことになると饒舌に話し出すところは、俺と似てるなと思いながらコップの酒を飲み干した。
そして今、俺は知らない部屋にいる。
最後の酒を飲んでからの記憶がない。
そしてこの状況。
いやいやいやいや、不味いだろコレは。
いや、まあ男同士だし?
ただ楽な格好になって寝ちまっただけかもしれない。そうだよな?そうだといってくれ、頼む。
俺は嫌な汗を止められずにいた。
確か俺は酔うとキス魔になるとかルードが言っていたような気がする。
だとしたら非常に不味い想像しか浮かんでこない。
そう。
隣には
すやすやと、寝息をたてている
長身の男、ヴィンセントがいたのだ。
しかし、ぐっすり眠るような相手かと問われると
非常にわかりにくい相手で、
レノは頭を抱えるしかなかった。
目覚めを待って問いただすか、
このままトンズラしてしまおうか。
しかし、この状況がどうであれ
俺は、コイツの事をどう思っているんだろう?
気恥ずかしい気持ちはあるが
もしそういうことがあったとしたら
嫌だったのか、と問われると
俺は答えを出す事ができなかった。
だって、コイツは多分優しいから。
無理矢理なんて事は絶対にないだろう事は明白だし
俺も、満更じゃないし。
どうしたものか。
レノはとりあえず
相手が目覚めるのを待つ事にしたのだった
-もしかしたら続く-