不死川実弥の初恋なんともむさ苦しい男子校の入学式当日、不死川は不審な人物を目撃した。制服を着ていて自分と同じ様に席についているのだから生徒なのは間違い無いのだが、伸び過ぎた前髪(鼻の下まである)、挙げ句謎の眼鏡(普通の眼鏡となんか違う)。髪は黒々としているのにやけに生白い肌をしていて細い。
やたら俯き加減で影が薄い。ようは怪しい貧弱だった。むさ苦しいとは違うがアレはアレでゾッとする。一瞬霊体と間違える程に暗かった。名前順に並んだ席の自分の隣。そこだけジメッとしていてキノコでも生えそうだ。不死川はため息を吐いて、吸った空気がかび臭くないかとやきもきした。
小学校、中学校、学年が変わる初めの授業は必ず席替えだった。きっと高校初日もそうなるだろう。この陰鬱としたド陰キャともすぐにおさらばだ。不死川は陽キャとまでは行かないが、男友達とふざけあって笑い合うのが好きだった。たまにはやり過ぎて先生に怒られるのも合っていいと思っている。
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