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    Pico_Tota

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    Pico_Tota

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    アダルト雑誌に赤面する神威さんのお話です。

    神威さんの誕生日記念ということであぶかむ小説公開したかったけど案の定間に合わなかったので、全然本編じゃない冒頭部分だけ載せときます🙇‍♂️
    (実は1年前から書いていた)

    #あぶかむ
    beTooKeenOn

    責任取って!!「阿伏兎ぉ、これ回ってきたぜ」

    押し付けられた書類たちを抱えて自室へと移動している途中。船内の一角でたむろしていた団員の一人が、阿伏兎の視界を遮るように目の前にとある雑誌を差し出してきた。

    「おー、こりゃあいい女じゃねえか」

    視界いっぱいに広がったのは、大事な部分を隠す布がシジミくらいしかない水着を着た、ナイスバディな女。M字開脚をしたあられもない姿で上目遣いにこちらを見つめている。女の頭上には『わがままボディのわがまま教師を啼かせる放課後24時♡♡』なんて頭の悪そうなキャッチコピーがでかでかと踊っていた。

    いわゆるアダルト雑誌だ。印字されている発売日は昨日の日付だが、既に雑誌は何人もの団員の手を渡ってきたようで、ページの端が折れていたり変色したりしていた。

    「こういうの好みだろ、お前にも貸してるよ」

    雑誌の持ち主である別の団員は一度阿伏兎の前から雑誌を引っ込め、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて中身をパラパラとめくった。肉感的な女体が乱れに乱れた写真がいくつも垣間見える。胸と尻がでかくて生意気そうな顔をした女は、確かに俺の好みだ。

    こいつにはAVやらアダルト雑誌やら何やらの貸し借りで何度かお世話になっているので、俺の性癖は大方バレている。今回もなかなかにストライクゾーンの雑誌を見つけてきたようだが、どうだとばかりに反応を求められるのは少々鬱陶しい。こいつは俺が受け取らない限り永遠にパラパラし続けるつもりか。

    「…んじゃあ、お言葉に甘えて使わせてもらいましょうかねえ」
    「おおっ、珍しいな! 」
    「あの阿伏兎がなあ」
    「えげつねえ使い方すんじゃねえぞー」
    「てめぇらが薦めてきたんだろ!?」

    しぶしぶ受け取れば、奴らの中で品の無い歓声が上がった。隊員同士でのアダルトグッズの貸し借りにあまり参加しない俺をからかっているのだ。

    しかしそれは決して、断じて、女に興味がないからとか、性欲が強くないからとかいう訳ではない。ヒラのこいつらと違って俺は毎日毎日バカ団長の尻拭いに奔走せねばならず、こんな雑誌を読んでる暇など無いだけなのだ。

    そしていつの間にか枯れていた。

    なんてことも断じてない。まだ32だぞ。

    「一泊二日はタダで貸してやらあ。延滞したら罰金な」
    「はいはい有難く読ませてもらいますよ」
    「あいつにゃそんな貸さなくてもいいんじゃねえの?」
    「早く俺にも回せよー」

    後ろから不満の声が聞こえてくるが無視する。まあ確かに正直なところ二日間もいらない。どうせ一発出したら満足して眠くなっちまうんだから。

    いや、待て。
    阿伏兎はふと足を止める。

    だから俺、まだ32なんだけど。

    いつの間にか枯れていた説がいよいよ濃厚になり、思わずため息が出た。


    **


    「団長、これ、目通しといてくれ」
    「えー阿伏兎やっておいてくれたんじゃないの」
    「大半はな。これはアンタのサインが必要なやつ。最低限の量に減らしてやったんだから、ありがとうくらい言ってくれませんかねえ」
    「えーやだよ。面倒だなあ」

    団長の部屋を訪れ、団長の代わりにやっつけた書類を渡した途端、不機嫌そうな顔になる団長。俺忙しいんだけどとぶつくさ文句を言っているが、ベッドに寝転がっている様子は少しも忙しそうでは無い。

    「んじゃ俺は戻るんで、ちゃんとやっといてくださいよ」
    「ちょっと待って。それ何?」
    「はい?どれ?」

    しぶしぶ書類を手に取ったと思いきや、団長はじっとこちらを見つめていた。正確には俺の手元を。つられて手元に視線を降ろすも、特に呼び止められるようなものは持っていない。

    「書類しか持ってませんよ。アンタの代わりに俺が…」
    「違うよ、その一番後ろのやつ」
    「一番後ろ? ……あっ」

    書類をひっくり返して、ようやく団長が何を言っているのかが分かった。

    ピンク地にでかでかと裸の女の写真が載せられた、勿論中身もピンク100%のアダルト雑誌。先程団員から手渡されたのを書類と一緒に持ってきてしまったようだ。

    (しまった…絶対しつこく絡まれる……)

    嫌な予感にだらだらと冷や汗が流れる。案の定、団長はにこにこと満面の笑みを浮かべながら俺が持っている雑誌の馬鹿げたタイトルをゆっくり読み上げた。

    「わがままボディのわがまま教師を啼かせる放課後24時……ふうん、阿伏兎ってこういうのが好みなんだ」
    「いやあ好みっていうか…まあ、はい、そうですね……」
    「ふうん……」
    「あの、な、何か…?」

    雑誌をじいいっと見つめたまま、団長は何も言わない。その沈黙がいたたまれなくなって俺はおずおずとお伺いを立てる。すると団長は笑顔のまま口を開いた。

    「俺にも見せてよ」
    「えぇ!?いや、でも団長のタイプの女とは違うんじゃないかなーなんて…」
    「見せろよ」

    ほら言わんこっちゃない。早く渡せとばかりにこちらに伸ばされる手。これを拒んだら酷い目に遭うことは分かっていたのだが、とはいえ借り物の雑誌を団長に貸して、もし返ってこなかったら他の団員達にどれだけ恨まれることか。

    「何か言った?」
    「いやいや、なーんにも言ってないです。どうぞ、お楽しみください」

    団長に笑顔で睨まれた瞬間、俺の中の天秤は一気に傾いた。
    すまん。俺はまだ死にたくねえ。心の中で同僚に詫びつつ俺は雑誌を団長に献上した。

    意気揚々と雑誌を受け取った団長は、ベッドに寝転んでさっそく頭上に広げる。そして、パラパラとページをめくっていた団長の笑顔が明らかに固まったのを、俺は確かに見てしまった。

    「どうした団長?」
    「……………」
    「聞いてる?」
    「……………な、なんでもないけど」

    しばしの沈黙の後ようやく返ってきた返事が思っていたよりも小さくて、俺は違和感に眉をひそめた。

    「おい団長。なんでもねえってこたあねえだろ。どうしたんだよ」
    「……だから、何でもないってば」
    「じゃあなんで目逸らし……って、顔真っ赤じゃねえか…え、あ、あれ? 団長ってこういうことの耐性無かったっけ……?」

    そう聞くと団長はこちらに視線を戻し、俺をきっ、と睨みつけた。

    「…………うるさい」
    「えっ……」

    さっきよりも一層か細い返事に思わず息を呑む。だってこんなの予想外すぎるだろ。あの団長が?アダルト雑誌見て顔赤くするなんて誰が思うかよ。

    (…まあよく考えてみりゃそれも当然か…?)

    団長は幼い頃に家を出て、春雨に入ってしまった。男所帯なので女と接することなんて普段はほとんど無いし、たまたま寄った星にある遊郭に団員が連れ立って遊びに行く時も、団長は1人飯か戦闘に興じていた気もする。というかそうだった。別に女遊びを覚えねばいけないなんて決まりはないのだし、今の今まで女を知らないとしても気にする必要は無い。多分。
    え?鳳仙の旦那?それはこの際横に置いておこう。あの人は逆に女にうつつを抜かしすぎだ。戦闘狂でいてくれる方がまだマシ。多分。
    とはいえそんな風に団長のことを慰めたら今度こそ間違いなく殺されるので、俺の方から先に謝っておく。

    「あーー…変なもん見せちまって悪かったな。んじゃそれ返してください」
    「…やだ」
    「やだ??」

    駄々っ子のような返事に思わず首を傾げる。聞き返してみると、団長は恨めしげな顔をしながら雑誌の表紙をバンバンと叩き始めた。いや、壊れるって。アンタに叩かれたら人でも何でも。

    「あのー団長、それ一応借り物なんで叩かないでくれます?」
    「大体さあ!俺がこーゆーのに耐性がないの、阿伏兎のせいだからね!お前が書類仕事ばっかりやって俺に戦闘押し付けるのが悪い!」
    「俺の話聞いてる?ていうかそれ俺のせい?毎回毎回アンタが自分から突っ込んでんだろ」
    「いいから何とかしろ」
    「ええ……うおっ」

    団長が投げた雑誌がものすごい勢いでこちらに飛んでくる。すんでのところで避けたので、雑誌は後ろの壁に突き刺さった。

    「おいおい危ねえだろうが!雑誌は…ギリ生きてんな」

    様子を見に行くと、壁に綺麗に刺さったおかげで何とか雑誌の形は保ってくれていた。慎重に壁から抜き取り、団長に奪われる前に懐にしまっておく。

    「あー…何とかしろったってなあ…写真見ただけでそんなんなっちまうんだもんなあ」
    「うるさいってば」
    「んーー…あ、団長、荒療治になるかもしんねえけど今度風俗行ってきたらどうだ。近々そういうのが売りの星に補給がてら二、三日寄る予定だったろ。他の奴らも行くだろうし、それについていけよ」
    「阿伏兎は?」
    「俺は行かねえ。補給の時くらい仕事に追われず休みたいんでね」
    「ふーん。枯れてるね」
    「か、枯れてはねえよ…」

    自分でも気にしているところをこうもあっけらかんと言われると怒鳴る気力も無くなる。ただただ辛い。

    俺、まだ32なのになあ…。

    「じゃあ俺行くから。またね阿伏兎、雑誌のお姉さんには慰めてもらえるといいね」
    「余計なお世話だってんだよ」

    団長が去った後でどっと疲れが襲ってきた。ため息をつきながら、さっきまで団長が寝転がっていたベッドに座る。ようやく訪れた一人の時間。やることはひとつしかない。
    阿伏兎はかろうじて団長の魔の手から生き延びた雑誌を懐から取り出し、目当ての女優のページを開く。
    こういうことをするのは随分とご無沙汰だった。ベルトを緩め、ズボンを下ろし、雑誌に目をやりながら自分のものを取り出して握る。
    異変は処理を開始してすぐに訪れた。

    (た、勃たねえ……!)

    いくら雑誌を食い入るように見ても、ひたすら擦っても、それは少しも立ち上がってはくれなかった。

    「おいおい冗談だろ…」

    その後も悪あがきをしてみたものの、やはり多少硬くなっても芯を持つまでには至らない。ふにゃりと頼りなく手のひらの中で萎れるそれを見て、阿伏兎はがくりと項垂れた。



    結局その雑誌は少しも役立てられないまま持ち主へ返却されたのだった。



    つづく
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