「春にい、この子は御門梓乃くん。オレの恋人です」
頬を赤く染めながら告げた光の隣にいる人物 —— 御門と、俺はお互いを見て固まっていたのだろう。
「あれ、もしかして2人とも知り合い?」と尋ねられるのに時間は掛からなかった。
御門と俺は一夜を共にしたことがある。終わった話、俺が悪いと言い訳を考えながら視線を前に向けると、御門が何かを訴えたそうな目でこちらを見ていた。今にも首を横に振るいそうに見えたのは、俺の願望だろうか。どちらにしろ正直に話してしまったら、2人の関係に大なり小なり影が差すことには違いない。俺と、そして御門も口を開いた。
「「(お)店で見かけた人(です)」」
※( )表記は梓乃くん
手を洗いながら、怪しまれることを言わなかったか、席の離れ方が不自然じゃなかったかを反芻する。それこそ既に終わったことだ。言わないと決めたからには押し通すしかない。もう一度決意を固めて廊下に出ると、光が立っていた。こちらを見つけると眼前にやってきて、声をかけてくる。
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