ジューンブライド赤木が、黒いタキシードに袖を通す。
同じく、黒いタキシードを着た木暮は、鏡越しにその姿を見て「剛憲、似合ってるよ」とニッコリ微笑んだ。
赤木は、照れ臭そうに微笑んだ。
「公延、おまえも素敵だ」
赤木の黒いタキシードは、レンタルではなく、今日のために誂えてもらった一着だ。
レンタルで、赤木がギリギリ着られるサイズもあったが、デザインがしっくり来なかったので、一から作成してもらうことになったのだった。
今日という日を迎えるまで、紆余曲折があった。
遡ること約半年前、二人は史上最大の大喧嘩をした。
基本的に、滅多なことでは喧嘩しない二人である。
滅多なことどころか、二人が「恋人」として付き合いを始めた以降、喧嘩らしい喧嘩をしたことはなかったかもしれない。
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