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    yuritano_fuu

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    yuritano_fuu

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    サタイサ。多分ハワイ前の日常。付き合ってる時空。外泊の時に一緒に食事を作っているけど、それが負担なのではないかと心配するイサの話。
    ※J隊の規則とか生活はネットでざっと調べた程度のことです。結構捏造あり
    加筆修正のち支部などに載せます。

    食わせることは、愛することだ「バター乗せたらホイルでつつんでくれ。隙間ができないようにな」
     勤務中よりも甘く穏やかな声で、サタケはイサミに指示を出す。はい。といつもより気のゆるんだ声で答えたイサミは、真剣に具材の上に角切りにしたバターを乗せた。よい秋鮭が安く手に入ったということで、今回の料理は鮭のホイル焼きである。イサミは鮭を包むアルミホイルをぴっちりと合わせて折った。工作みたいで少し楽しい。
     同じ中隊の隊員兼恋人同士のサタケとイサミは、休日はその前日夜から営外のサタケの家に泊まっている。休日は家で過ごすもよし、出かけるもよし。言うなればサタケの家を余暇の拠点にしていた。そこで重要なのが食事である。自炊派のサタケは昼食以外、大抵は自身の料理を食べており、それはイサミが泊まりに来た時も変わらない。自分の分まで余計な仕事が増えたことに申し訳なく思ったイサミは、泊まるようになってすぐ手伝うようになった。サタケはもてなしたいのだからそんなことはしなくていい、と断ったが、イサミはそれに従えるほど厚顔ではいられなかった。押し問答をしながら、イサミが料理を手伝ったり、二人の洗濯物を干したりするようになり、今では双方それが当たり前に馴染んでいた。加えて結婚してるみたいで楽しいなと浮かれてもいる。
     だが、イサミはそんな楽しい作業を少し楽しめなくなっていた。その原因は、強いて言うなら恋人のサタケにあった。
     一週間ほど前の、昼食時の隊員食堂であった。混み合う食堂内で、ヒビキら中隊の他のメンバーと席を探していると、別の席で食事をしているサタケを見つけた。サタケのみ午前中に隊長職の人間を対象にした研修で別行動をとっていたのだ。同席をしようと声をかけようと思ったイサミだが、実行されることはなかった。席が人数分ないことと、サタケが同席していた人物がどうやら知り合いだったらしく、話が弾んでおり、割り込むのに気が引けたからだ。
    「サタケ二佐って、自炊していらっしゃるんですよね。献立とかどーやって立ててんですか?」
    「それ俺も知りたいッス。めちゃくちゃダルくないスか?」
     少し離れた席に落ち着いたイサミの聴覚は、サタケたちの席の方に集中した。好きな人のことは、何でも知りたくなるのが人間の性である。
    「確かに献立考えるの面倒だよな。俺は献立は主菜だけ決めて、あとはフィーリングで付け合わせつくってるな〜。あと、二、三日分まとめて作り置きして、手間を省いてる」
     イサミは自分の頭の中が真っ白になるのを感じた。サタケの家に泊まりに行く時は、多少作り置きの常備菜を利用しているが、一日三食毎回作っている。しかも、イサミからするとかなり手数の多い料理が献立にのぼる確率が高いような気がしている。
     以前、そのことに対してすごいと漏らしたら、大したことないぞ、と事もなげにサタケからは返ってきた。益々すごいと思ったが、イサミに心配かけないよう、無理しての発言だったのではないだろうか。
     献立を立てたり、料理をしたりする手間をふだんから省いているくらいなら、出来合いのものでもいいのに、とイサミは申し訳なく思った。好きな人には無理をさせたくない。
     イサミは脳内のToDoリストに、サタケに外泊時に惣菜を持って行くか相談すると入れた。だが、あの時間の楽しさが無くなるのが惜しかった。

     楽しみきれないまま調理を全て終え、食事の準備が完了した。料理からは湯気と美味しそうな匂いが上り、これぞ幸福な食卓といった風景が目の前に広がっていた。
    「美味そうにできたな。食うのが楽しみだ」
     サタケが本当に嬉しそうに微笑んだ。
    「殆どアンタの手柄ですよ。俺だけじゃ味噌汁なんて作れないし」
    「学校の家庭科でやるんじゃないのか?」
    「一回だけじゃ忘れますよ」
     憎まれ口を叩いても、心地よい軽口の応酬に変えるサタケの懐の深さにイサミは心が浮き立つのを感じた。それだけに、引き伸ばしてしまった“相談”の内容が重かった。
     食べ始めてしばらく味の感想や料理の改善点を話した。話が途切れたところで、イサミは吐き出すように相談の内容を告げた。
    「リュウジさん、俺、ここに泊まる時、なんか惣菜とか買っていきますよ」
     サタケの顔は途端に訝しげな表情になった。
    「……別にしなくていい。どうした、いきなり」
    「……毎回毎回こんな手の込んだの作るの、大変じゃないですか? 俺、リュウジさんに負担かけたくないですよ」
    「全く負担じゃないぞ。それにお前と作るの楽しいし……お前が嫌なら考えるが」
    「俺は全然いやじゃないッス」
    「なら変えなくていいな……どうしてそんなこと思った」
     食い気味返したイサミがいじらしくて、サタケは思わず微笑んだ。だが、イサミがこんな提案をするに至った理由が見えないのは不安であった。
    「前、食堂でリュウジさんが、飯用意するとき、二、三食まとめて作ってるって言ってるの聞いて……でも外泊のときは毎回作ってるから、無理してるんじゃないかって」
    「無理なんて全くしていないぞ、本当に。平日まとめて作っているのは忙しいから手抜きしてるだけだ。休みに毎回作っているのは、出来立ての一番美味いのをお前と一緒に食べたいからだよ」
     そう優しく告げるサタケの微笑みには、イサミへの愛おしさがありったけ含まれているのがよくわかった。そんな表情を向けられているイサミは、首の後ろを無性に掻きたくなった。
    「そっすか……俺もリュウジさんと一緒に飯作って一緒に食べるの、楽しいです。でも、もっと何かできることないですか?」
    「うーん……そうだ、イサミ、お前が食べたいものがあったら言ってくれ。これなら献立立てるのもっと楽になるし、お前にも好きなもの食わせてやれる」
     イサミは目を瞬いた。
    「そんなんでいいんですか」
    「いいんだよ。真面目な話、料理のレパートリーを増やしたくてな。お前が提案してくれると助かる」
    「わかりました。食材も買っていきましょうか?」
    「それなら一緒に買いに行こう。その方が楽しいだろ」
     イサミの脳裏に二人で一緒に買い物をするシーンが思い浮かんだ。それだけで楽しい気分になれた。
    「そうですね」
     イサミの幸せそうな笑顔につられて、サタケも笑った。
     二人は食事の続きにとりかかった。美味しい料理がさらに美味しくなった気がして、イサミは口元をほころばせたのだった。
    fin.


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    PROGRESSサタイサ。多分ハワイ前の日常。付き合ってる時空。外泊の時に一緒に食事を作っているけど、それが負担なのではないかと心配するイサの話。
    ※J隊の規則とか生活はネットでざっと調べた程度のことです。結構捏造あり
    加筆修正のち支部などに載せます。
    食わせることは、愛することだ「バター乗せたらホイルでつつんでくれ。隙間ができないようにな」
     勤務中よりも甘く穏やかな声で、サタケはイサミに指示を出す。はい。といつもより気のゆるんだ声で答えたイサミは、真剣に具材の上に角切りにしたバターを乗せた。よい秋鮭が安く手に入ったということで、今回の料理は鮭のホイル焼きである。イサミは鮭を包むアルミホイルをぴっちりと合わせて折った。工作みたいで少し楽しい。
     同じ中隊の隊員兼恋人同士のサタケとイサミは、休日はその前日夜から営外のサタケの家に泊まっている。休日は家で過ごすもよし、出かけるもよし。言うなればサタケの家を余暇の拠点にしていた。そこで重要なのが食事である。自炊派のサタケは昼食以外、大抵は自身の料理を食べており、それはイサミが泊まりに来た時も変わらない。自分の分まで余計な仕事が増えたことに申し訳なく思ったイサミは、泊まるようになってすぐ手伝うようになった。サタケはもてなしたいのだからそんなことはしなくていい、と断ったが、イサミはそれに従えるほど厚顔ではいられなかった。押し問答をしながら、イサミが料理を手伝ったり、二人の洗濯物を干したりするようになり、今では双方それが当たり前に馴染んでいた。加えて結婚してるみたいで楽しいなと浮かれてもいる。
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