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    あわ…

    @awa_i7

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    あわ…

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    付き合いたてのユキモモ

    と、巻き込まれる万理
    モモチャンウェット気味注意
    続きます!続きはR18(予定)

    クレイジーバルーン「モモ……これは、どういうこと?」

     ユキの声は掠れていて最高にセクシーだったけど、怒りを押し殺したような温度の低さで。それなのに名前を呼ばれる度にオレの体は浅ましいほど正直で、ずくんとお腹の奥に響いて震える。ぞくぞく上がってきた波を唇を噛んで耐える。いつの間にか頬を伝ってきたしょっぱさは汗か涙かわかんなかった。

     爆発寸前だったオレの風船はユキの鋭い氷の声で空気が抜けていき、みるみる萎んでいった。


    ***





     ユキに求められたい!! っていうか、襲われたい!!!!

     ムラムラ膨れ上がったオレの鬱憤と欲望は寂しさと嫉妬というスパイスで醜悪にデコレーションされ、破裂寸前の風船のようにパンパンだった。このまま持っていたらこの爆弾で地球ごと爆発しちゃう。そんなの宇宙規模のガチめ爆弾魔だよ。抱えたまま遥かな銀河へ飛び出すことが可能ならばやっちゃうんだけど、次の宇宙旅行って抽選枠待ちなんだって。そんな悠長に待っていられないよ。
     オレの厄介風船を穏便に処理するには、慎重にビニールテープを貼って針を刺せれば爆発せず空気を抜けると思うんだけど、それができるのはこの世で唯一人、ユキだけなんだ。空気を抜くと抜くでダブルミーニング……じゃなくて! でもさ、ユキに尖った針なんて持たせらんないし、もっと平和に安全に甘く解消してもらうしかないよね。てかさ、ユキとふたりきりでいちゃいちゃすることがガス抜きならぬ、爆弾処理なんだもん。オレ達、おつきあいしてる恋人ってやつなんだし、好きな人のこと欲しいのは悪いことじゃないよね? 望んでも許される……よね? つまり、だから、オレは、ユキに……襲われたい!!!!!

     葛藤しながらも興奮しつつオレは計画を練り、爆発寸前のどろっどろの欲に負けて本日決行することにした。題して「ユキをその気にさせて襲ってもらおう♡作戦!」ネタバレ考慮なし、タイトルそのままの内容であります。ユキのお仕事がオレより遅くなる日を探して、ユキのお部屋で待ち伏せする。スケジュールを事前にチェックしまくって網の目くぐってやっと見つけた今夜。

     オレの体も準備万端。この日のために挿れやすいようにひろげてきたし、トイレとお風呂はもとより、中は出来る限り洗浄して消毒してローションぶちまけて塞がんないように蓋をしている。エステも行って舐めてもらっても苦くないスキンケアだけやっておいて、顔とおしりにパックもした! ダーリンが帰ってきたら即、合体可能です!! あ、はは、さすがに引かれるかな……ユキはやさしくてジェントルだし、ここ最近時間が合わなくて抱いてもらえてなかったから、お互いに溜まってると思うんだ。溜まってるなら、してもらえるよね。よね……? だから、だから、だから……。

     ベッドに潜り込んで待ち伏せするまでの時間もやばかった。これからユキにしてもらえるって期待しながら体の準備するのめちゃくちゃ興奮するし幸せすぎる。うう、はやくしたい……。ユキが欲しいよぉ…………。お腹の奥が切ない…………。もじもじしすぎて想像で一回抜きたくなったけど我慢。してもらえる、筈、だもん……!!

     今オレが潜り込んでるユキのベッドには、バスタオルと、ふかふかさらさらのシーツの下は耐水性のシーツとか仕込んでるし、いいローションやユキサイズのゴム(オレのも一応)、使わないかもしれないけど例の手錠とか、ちょっとしたオモチャも用意した。
     あまり長く待つとお腹ぐじゅるかもしんない。それは申し訳無さすぎるから、MCで鍛えたオレのタイムキーパー力がちゃんと仕事してることを祈ってタイミングを見計らって仕込んだ。時間把握には自信あるかんね。ユキがお仕事終わって家に帰り着くまで……寄り道したとしても間に合うはず。きっと、出来立ての体をおいしく食べてもらえる。

     ただ、寒い。暖房入れたけど薄着してるしローションも温感のやつより品質を選んだし、湯上がりだしでちょっとだけ冷えるかも。一人の寝室、こんなに寂しくて冷たいの……? 大好きなユキのベッドなのに。

    「ユキぃ……まだぁ……」

     堪らなくなって呟いてしまった。情けない声でわらっちゃう。オレって前からこんなによわよわだった? ユキにぎゅってしてもらえるようになって、わがまま増えたよね。

    (でもでも、だってさ、)

     目を閉じると、オレを見て微笑む世界一大好きな美しい顔が見えちゃうもん。夢なんかじゃなく、実物を浴びることが出来るんだから。想像するだけで胸の鼓動が高まる。息が出来なくなるくらい、どきどきしてる。あ~〜、やば、すき……。イケメン……。顔がいい……。顔だけじゃなくて全部全部全部最高……。ユキが普段使ってる枕を抱きしめてベッドの上をごろごろ転がった。めちゃくちゃいい匂い。ユキの……匂い……。正直言えばタオルとシーツの下で存在感増してるビニール生地は寝心地が良くないけど、マットレス汚すよりまし!!

    『ただいま、モモ……? 寝てるのか?』
    『僕のベッドで何してたの』
    『ふふ、そんなかわいい格好で待っててくれたんだ』
    『煽るなよ……我慢できない、抱くよ』
    『モモごめん、加減できないかも……』
    『おまえが欲しい』

    (なんちゃって! なんちゃって……!!)

     オレのテンションがおかしすぎて解像度低いダーリンの妄想してしまった(ユキはこんなこと言わない!)けど、ユキってばいつも想像より1000億倍かっこいいからいいんだ。逆にキュートな妄想しておけば実物のかっこよさがマシマシになって最高だしいいんだもんね! ワクワクしすぎてベッドの上でじたばたしてしまった。あ~〜もお、ユキ、ユキ、大好き!!!!

     おつまみはウーバーしたしアルコールも用意してる。邪魔されそうなスマホを見ては“今日は寝るねおやすみー!”、“またあした!”みたいな業務連絡も、逸る気持ちで震える指が誤タップしそうになるのを堪えつつ諸々終わらせておいて最愛の人の連絡だけ待つ。もうすぐ会えるはず。こんな状態でまともな返信できたオレ、えらい! ハートのスタンプで頭の中いっぱいなのに。だからモフユキさんの寝てるスタンプ押すだけでもピンク脳が加速しちゃう。モフユキさん、いつもよりキュートでイケメン! 画面にちゅーしたい! 

    (ちゅっ!)

     待つこと数分。ユキのベッドで横になり、もじもじダラダラむらむら待ってたら玄関から物音がする。耳や尻尾が生えてたら千切れるくらいブンブン振ってそうな勢いだったと思う。作戦ではしっとりとセクシーにベッドで待ち伏せしている筈だったのに嬉しすぎて飛び出していた。

    「ユキ〜〜っ! おっかえり〜!!!!」

     待ちきれなくてドタバタ駆けていくと──。

    「ただいま、モモ」
    「百く……ん?」

     玄関には待ち望んでいたユキと、もう一人。背が高くて顔も性格も声もスタイルもいい一般人とは思えないお方が目を丸くしてオレを見ていた。

    「バ、バンさん……?」

     なんで驚かれたんだと思ったのもつかの間、自分の姿を見下ろしてハッとする。まだ脱いではいないが今のオレはユキがプライベートで着てるゆるっとしたアイボリーの長袖シャツ一枚。下着はつけてるけどそこそこえっちなぱんつなので透けてないことを願った。あと、おしりにはプラグを……入れており……。顔が熱く燃えていくのを感じた。なんとオレ、こんな格好していますがしらふです。一人で盛り上がってるのが恥ずかしくて玄関のイケメン二人を見ることができなかった。やる気まんまんすぎる。シャツも不自然に上から二個目のボタンまで外してるし、ユキのこと誘惑できたらいいな〜なんて下心満載の格好だった。こんなみっともない姿を見せてしまうなんて恥ずかしい。お、終わった……。

    「……万、悪いけどもう帰って」
    「邪魔して悪かったな。そうする。百くん、また今度飲もうね」
    「バンさん……!!」

     恥ずかしすぎて辛い。オレは、なんてことを。
     消えてなくなりたい…………!!

    「バ、バンさん、帰らないでください! オレ、着替えてきますから! ユキ、バンさんをおうちに連れてくるなんて珍しいし、何か積もる話があったんですよね!? なんならオレ、席外しますし! 中入ってください!」

     早口かつデカい声で畳み掛けながらバンさんに駆け寄る。背が高くて少し見上げる形になった。慌ててバンさんのスーツの裾を握っちゃったから皺にならないか心配だ。申し訳ない。でも、ユキが人をおうちに連れてくるのは稀だし、余り会えないバンさんなら尚更この機会を逃しちゃいけない。しかも、外では話せないことでしょ。

    「……、モモ! 万、帰ってくれる」

     そしたらユキがオレとバンさんの間に割り込んできて、ぎゅってされて。突然腕の中に閉じ込められて視界がユキで埋まって飛んじゃいそうになる。元々ドキドキしていたのに恥ずかしさで違うドキドキになって、今はまた元のドキドキを上乗せされて忙しい。血液たちが全身かけっこ大会してる。大盛況すぎて血管破裂しちゃうかも。体が全身心臓になったみたいにドクドクしてる。顔も耳もどこもかしこもあっつい。

    「はいはい、わかってるって。千、だから言ったろ? 百くんも用心しなよ? ちょっと無防備すぎじゃないかな」
    「用心……ですか?」
    「今度埋め合わせする。わかっ……た、から。万はモモを見るな」
    「見るなって、おまえなあ」

     ユキの肩越しに玄関の前に立ってるバンさんに答えると、目を合わせてくれたバンさんは肩を竦めて苦笑する。爽やかなのに大人でちょっと意地悪な、イケメンな仕草が様になる。ユキと並んでるとどちらが負けるとかなく二人ともタイプが違ってかっこいいから、未だに眩しさにクラクラしてしまう。観客席にいる気持ちになる。ときめくけどちょっぴり寂しい。オレが戸惑っていると、ユキの腕は強く腰を抱いてくれて、反射的に背筋が甘く震えた。それだけで嬉しい。気持ちいい。体が燃えそう。思わずはぁ、とひとつため息が漏れた。オレの背中もユキの手に触れられて喜んでるのがわかる。

    「ゆ、ユキ……っ?」
    「、モモ……、じゃあな万!」

     ユキがオレを離してドアの向こうにバンさんを押し出し、ご丁寧にロックまで施錠した。せっかく抱きしめてもらえたのにぬくもりが離れてしまって、オレは切なくなった。もっとぎゅってしてほしいのに……なんて熱に浮かされていたけど、ユキ、怒ってる気がする。語気が強い。視線も鋭い気がする。そうだ、オレが情けない格好してたから恥ずかしくて隠してくれたのかも。それなのにバンさんに見られてしまって……。

    「……モモ」

     振り返ったユキはオレに低い声で呼びかけてくる。
     人が来るかもしれないのにこんなだらしない格好で飛び出してしまったんだ、危機感もなければデリカシーもない。ユキとバンさんに迷惑をかけてしまうなんて。急に体が冷えていくのを感じた。最悪だ。オレ、なんてことを。

    「ゆ、ユキ、ごめん……っ! ごめん! はやく着替えてバンさんに謝るから!! オレ、オレ、なんてことを……!」
    「は!? 待て!」
    「うわっ!?」

     ユキが長い腕を伸ばしてオレの体に触れようとしてくれたのに、申し訳なくて恥ずかしくて体を反らした。オレはバランスを崩し、尻もちをついて倒れてしまう。

    「モモ!」
    「ひぁっ……!!」
    「っ……!」

     最悪オブ最悪だった。プラグが押されてちょっと気持ちいいところ掠って情けない声漏れるし、床にあたってゴツ、とか変な音するし、股開いてパンツ丸見えだし、シャツも肩からずるりしてしまってるし、なにこれ……見上げたユキは玄関の明かりで逆光になってて表情が見えない。さすがに引いたよね。玄関先でこんな格好で、転んだりして。

     さすがにありえないか。オレの視界はみるみるぼやけてきて、ドキドキと鳴る心臓は悪い方向に運動会し始めた。赤血球くんたちはみんなゴール目指さず逆走してコースアウトして大混乱だよ。天国と地獄が頭んなかで流れたけど、こんな状況、地獄要素しかない。

    「ゆ、ユキ……や、やだ、み、見ないで……」

     慌てて脚を閉じてぺたんと座り直し、シャツの裾と気崩れた肩とか胸元を隠した。こんなつもりじゃなかったのに。もっと自然に、キュートに誘って、ハッピーにいちゃいちゃしたかっただけなのに!!

    「モモ……これは、どういうこと?」

     ユキの声は掠れていて最高にセクシーだったけど、怒りを押し殺したような温度の低さで。いつの間にか頬を伝ってきたしょっぱさは汗か涙かわかんなかった。爆発寸前だったオレの風船はユキの鋭い氷の声で空気が抜けていき、みるみる萎んでいった。

    「…………」

     こんなつもりじゃなかったのに。
     ユキのやさしさに甘えて押し切ろうとしていた。元々ユキは性欲もオレほどなくて、オレがしてほしいからしてくれてるのに。よりにもよってバンさんの前で欲に塗れた姿を晒して恥をかかせてしまった。最悪だ。

     ━━そうなんだ。
     多分、ユキはオレとセックスすることに乗り気じゃない。
     気づかないようにしていたけど、誘うのはいつもオレからだし、気持ち良くてわけわかんなくなるのもオレだけ。優しくてジェントルだから、オレが頼めば断らないでしてくれてるんだ。男の体を抱くのは大変なのに。オレのこと、すごく大事にしてくれてるから。傷つけたくないからって、願いを叶えてくれる人なんだ。ユキに抱かれたい魅力的な女の子なんてこの世界に山ほどいるだろうし、ユキは選ぶことも出来る。それなのに、オレが願うから触ってくれる……。本当はきっと、柔らかくて抱き心地の良い女の子の体で気持ちよくなりたいはずなのに。
     オレはうつむいた。綺麗に磨かれたフローリングにぽたりと雫が落ちる。

    「モモ、……泣かないで」

     廊下に座り込んだオレを心配したユキは、膝をついてオレの頬を拭ってくれる。ふわりと香るユキの匂いにときめいた。指で顔に触れられてそこから熱が灯るみたいに、嬉しい。オレの体はユキの気配ですぐに喜んでしまう。最悪だ。

    「モモ……、モモ、……どうしたんだ……?」
    「ゆ、ユキ、ごめん、ごめんね、オレ……っ、今日、帰るね」

     やってしまった。オレの頬を伝ってるのは涙だった。泣き落としなんて最低すぎる。ユキを心配させてる。多分このまま縋り付けば慰めてくれて、なんなら優しく抱いてもくれるだろう。でも、そんな脅迫めいたことはもうやめるべきだ。オレはユキの体だけが目当てなんじゃない。もちろん体も欲しいけど、そうじゃない。オレはユキに……ユキから求められたい。ユキから、オレのことを全部欲しいと思われたいんだ。心だけじゃなくてさ、オレの全てをユキのものにして貰いたくて、繋がりたくて。なんて強欲で罪深いんだろう。だって、ユキのこと、好きになっちゃったんだもん。そういう意味で。
     それに、ユキはオレのことを抱けるんだって知ってしまった。無理じゃないんだって。オレも抱かれる喜びを知ってしまった。好きな人と繋がる喜びを。

     オレの方を向いてくれただけで満足すればよかったのに、側にいればいるほど、わがままになるよ。こんなに幸せなのに。

    「待て、モモ、帰るな、ね……落ち着いて?」

     あやすような口調でオレを抱きしめてくれる。昔からそうだ。誤解されがちだけどこの素敵な人はやさしくてあったかい。撫でてくれる手も、包み込むような囁きも気持ち良くてこのまま身を委ねてしまいたい。どうしたって好きだ。優しいユキ、かっこいいユキ、大好き。

    「モモ……待っててくれたのに、万連れてきてごめん。びっくりさせちゃったよね」
    「ユキ……」

     そうじゃない。
     バンさんにびっくりしたのはきっかけで、一人で凶行に及んだ自分が怖くなったんだ。無理にテンションブチ上げてユキがほしいその一心で見たくないこと見ないようにして、ユキに襲われたいどころか追い込むつもりでいた。どうにかして性欲に訴えかけたくて。手を出してもらいたくて。
     お仕事終わって疲れて休みたいだろうに、寝室にも勝手に色々仕込んだりしてさ。人の家で人の服を着て何してんだって。痛すぎるよ。オレ。

    「お、オレ、……いや、オレ勘違いしちゃって、て、あはは、ほんと、バンさんにもちゃんと謝るから、ユキはあやまんないで!」
    「モモ?」
    「ごめん、ユキ。離して」

     顔を上げると、心底困った顔をしたユキと視線が合って、後悔した。大好き、とごめんなさいの気持ちが押し寄せてくる。外から帰ってきたばかりのおしゃれなコートと寒さに負けないように着込んだユキに、半裸のオレが抱きついていて、己の品のなさに幻滅する。さっきまで隣に居たバンさんもタイはしてなかったけれど、カジュアルなスーツは品が良くてかっこよくて……。

     かたや、オレは━━オレは。思い上がりも甚だしいだろ。



    つづく
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