『今日、そっちのリーダーが来たよ』
九条からのラビチャだった。台本を傍に置いてトーク画面を開くと、続けて十さんからもメッセージが送られてくる。
『二人から聞いて知ってたけどびっくりしちゃった!』
本当に行ったんだ。難しそうだったら帰ってくるから、なんて言ってたのに。大和さんだったら無理してでも行っちゃうってわかってたけど、いざそうなると余計心配になってくる。
『マジかー! 大和さん元気そうでした?』
『ヤマトの様子はどうでしたか?』
きっと自室にいるであろうナギも同じようなメッセージを送った。気になるよなあ、って小さく呟く。そのまま二人からの返信をじっと待った。
『疲れてるみたいだった。あんまり余裕がなさそうに見えたよ』
『OH……やはりそうでしたか……』
息を吐いてベッドに倒れ込む。あの人は本当に自己管理がヘタクソなんだ。オレにはほどほどとか言っといて、いつもはほどほどを装っておいて、本当はこうやって好きな人のために無理をする。
『でも、楽に会えて嬉しそうだったなあ。もちろん楽も!』
だろうなー! 大和さん、寮で八乙女の話してる時も幸せそうな顔してるもん。だから口を出しづらかった。八乙女に尽くしてる大和さんが幸せならそれを崩すようなこと言いたくなかった。そうも言ってられなさそうになってきてはいたけれど。
『絶対めちゃくちゃ嬉しかったんですよ! でも、こうやって無理するようならオレたちから言っときます?』
『いや、大丈夫だと思う。楽がなんとかするよ』
オレがメッセージを送ればすぐに九条が返す。八乙女のこと、信じてんだな。さすがTRIGGER。でも、本当に大丈夫か……?
『大和さん、隠すの上手いからなあ。八乙女気付けるかな?』
『気付けるよ。それに、楽も好きな人には尽くしたがりだからね。そろそろ自分も二階堂大和に何かしてあげたくてうずうずしてるんじゃない?』
『うちでもどこに連れて行きたいとか、一緒に何したいとか、ずっと言ってるもんね! 大和くんにはもちろん内緒だけど』
『まるで寮にいる時のヤマトです! 同じことをしていたと聞いたら驚くでしょうね』
『そうだな! でも、気を遣って黙っててやろうぜ、ナギ!』
OKと書かれたきなこのスタンプが送られる。全く、まだ黙って見守ってやるしかないか。もどかしくて仕方ないけど、これは大和さんと八乙女が二人で解決しないといけないんだ。オレたちは頼られたら口を出せばいい。
それにしても、本当に、
『しょうがないリーダーだよなあ』
『しょうがないリーダーだよね』
同時にオレと九条がほとんど同じメッセージを送る。思わず笑ってしまった。十さんとナギもきなこが笑ってるスタンプを送った。こっちも同じだ。ますます笑いが止まらなくなる。
『じゃあ今日のところはこの辺でお開き! 二人も公演お疲れ、八乙女にもよろしくな』
『次はワタシたちも必ず現地で拝見します。チケットをいただけるよう交渉してもらえますか?』
『もちろん! 姉鷺さんに聞いてみるね!』
『お互い忙しいけど身体には気をつけて。じゃあまたね』
親指を立てた王様プリンのスタンプを送る。全員の既読がついたのを確認して、チャットの画面を閉じた。上段に固定されたグループの名前は『リーダー見守り隊』。過保護なメンバーが集まって、自然とできたグループだ。
ちゃんと見守ってるからな、リーダー。幸せになれよ。でも、無理はほどほどに!あ