【ミザカイミザ】タイトル未定人は願いを語るとき、誰に受け取ってほしいのだろうか。
さしずめそれは、ため息の如く自然と出てしまった泥にも似て、もしくは、恋焦がれた末の灰なのかもしれない。それを知るのは、いつになろうか。
月の輪郭に、オレは抱かれていた。嫋やかに、冷たく、寂しい。
孤独ではない気はした。だがそれを保証するものは、誰一人として居ない。
眼を覚まさなければ───漠然とした、朝起きるように自然と夢の微睡の中で掴む意識のように、手を、どうにか。
天城カイトは、そうしたかった。
だが、彼の腕は上がらない。まるで己の体ではないような、鋼鉄の檻に魂が詰め込まれたかのように。指を象る感覚も、腕を持ち上げようとする筋肉の軋む熱も無い。
ましてや、己が今見ている瞼の裏は、果てない闇の先なのか、それとも遠い遠い記憶の先なのか。
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