Deeds, not words.奴には昔からの癖があった。
ただそれは一部の人間しか知らないだろうし、アイツ自身も忘れたい過去でもあろうから俺からは口出ししたことはないが、無言で手を取りあげ見つめれば大抵止めたのでそれでよしとしていたきらいもある。
本当は幼い頃からの仲だからこそ案じてキツく言い当ればよかったかもしれないが、どうしてかそれをしようとも思えなかった。
ほら、まただ。思案に耽る、お世辞にも綺麗とは形容し難い、しかし幾度となく運命の分岐を握った男のささくれ立った親指が口元に寄せられかけて、そこで本人がハッとしたように慌てて顎に添えて誤魔化す。
遊星は、爪を噛む癖が一時期あったのだ。
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