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    モブ令嬢に見せつけるがテーマなディミレト。事後表現有ります。

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    「まぁ、陛下もお茶会が好きでしたの! それならば今度は、私の手作りのお菓子をお土産にお持ち致しますわ」

     ころころと鈴の音の様に高い声が廊下に響く。まだ午前中の王城内には、旧同盟領から来客が訪れていた。それは同盟領でも有名な貴族らしく、国王陛下のディミトリに支援をしたいと名乗り出て来た令嬢である。わかりやすく媚びへつらう令嬢に、ディミトリは心の中で悪態をつきながらも早く用件を済ませて帰ってもらわないといけないと貼り付けたままの笑みで対応をする。

    「陛下は、茶葉は何が好きなのですの? 私は……あら、綺麗な中庭ですわ」

     廊下を歩く途中、小さな中庭が見える。令嬢の声につられてディミトリがその中庭に目を向けると、「ああ、それは」と言葉を紡いだ瞬間だった。

    「ディミトリ…」
    「っ、先生…! こんな格好で出歩いて、何をしているんだ!?」

     廊下の角から現れた人物に、ディミトリは息を呑む。薄緑色の珍しい髪がシーツの隙間から見える。そしてその身体を隠すようにすっぽりと長いシーツを引き摺る人物に、ディミトリはおろか隣りに居た令嬢も驚きの表情を隠せない。ディミトリは急いで目の前に現れた人物の元に一目散に近づくと、シーツで更に身体を隠す。まるでシーツのお化けに令嬢が呆気に取られていると、二人はお構いなしに会話を続ける。

    「起きたらお前がいないから……。今日は休みだと言っていなかったのか…?」
    「す、すまない。急な来客があってな…少し席を外していた」
    「来客……?」

     そういうとシーツのお化けの人物が、令嬢の方に視線を向ける。彼女はそれに戸惑うも、シーツの間から覗く綺麗な翡翠の瞳にどきりと心臓を高鳴らせる。まるで人間離れしたような人────彼女がそう思った瞬間、シーツのお化けは慌てて曲がり角に隠れる。令嬢は息を呑むと、「陛下、」とディミトリを呼ぶ。

    「私、お邪魔でしたわね。もう用件は済みましたし、帰りますわ」
    「も…、申し訳ありません。近い内に謝罪に伺いますので…」
    「大丈夫ですわ。私、勝ち目のない勝負は致しませんのよ?」

     意味有りげな令嬢の言葉に、ディミトリは何を言われているのかわからずに「はぁ…?」と首を傾げる。後ろで控えていたドゥドゥーが、令嬢に「お見送り致します」という言葉に彼女はにこりと微笑んで「猊下に宜しくお伝えくださいな。近々、大修道院にも行きますわ」という言葉と共に去っていった。

    「ばれていたか…」
    「っ、先生…。まぁ、大丈夫だよ。あの人は聡いし、セイロス教の信徒だから」
    「………だと良いのだが」
    「そんな事より、だ」

     ぱさり、シーツのお化けこと座り込んでしまっている愛しい恋人───ベレトのシーツに手を掛ける。彼は辛うじて下着だけは身につけているが、殆ど裸同然だった。シーツがなかったら完全にアウトだ。するりと頭から落ち、辛うじて肩に引っかかるシーツにディミトリは息を吐く。ベレトの肩や、首筋、胸元に腹…挙げたらきりが無いくらいにある赤い痕と噛みつかれたような歯型が無数に白い肌に散っていた。ディミトリは手近な彼の胸に手を滑らせ、意地の悪い笑みを浮かべる

    「そんな格好で彷徨いて、誰かに襲われたらどうするんだ?」
    「っ…。こんな、独占欲丸出しな身体を見たら嫌でもわかるだろう…」
    「どうだか…。先生はもう少し、自分の美しさに気づくべきだぞ」
    「ディミトリに言われたくな─────っぁ…!?」

     ふわり、ベレトの身体が抱き上げられる。膝裏にディミトリの腕が回されると、あっという間に姫抱きをされてしまうのにベレトも条件反射の如く、その首筋に腕を巻きつけた。納得がいかないとばかりに頬を膨らませていると「うーん…」とディミトリが唸る。

    「……今度は何だ?」
    「いや…。シーツがヴェールみたいだなって。やはり先生の婚礼衣装にはヴェールをつけてもらおう」
    「……………うん、好きにしろ」

     軽い足取りで自室へと向かうディミトリに、ベレトはもう相手にするだけ無駄だろうと早々に諦める。昨晩の激しすぎる情事もだが、ディミトリが朝起きたら隣にいない事に気づき、こうやって王城内を探してしまう程の喪失感に襲われていたのに、このテンションの落差はなんだろうか。ベレトは少しだけ悔しくなって「なぁ、あの時…」と声を発する。

    「ディミトリ、さっきのお客さんにあの中庭の事を聞かれていただろう? …何と答えるつもりだったんだ?」

     ベレトの言う中庭とは、ディミトリがベレト専用に誂えさせた中庭の事である。まだ正式に婚約は発表をしていないが、ベレトか大修道院から王城に来る際に彼の趣味である園芸や野菜作りが出来るようにと設けさせた。あそこで茶会が出来るように東屋も設けさせた。そんなベレト専用の中庭をあの客人の令嬢に尋ねられた時、ディミトリは何と答えるのか気になっていたのだ。ベレトが聞けば、ディミトリはふっと笑った。

    「ああ。伴侶の為に誂えさせた中庭だと言おうと思ったんだ。真実だからな」

     ディミトリの言葉に、ベレトの頬は真っ赤に染まる。戦後間も無いとはいえ、新しい国王に就任したディミトリには毎日の様に縁談の話が飛び込んでくる。先程の令嬢もそのひとりであろう。しかしディミトリの言う通り、聡い彼女はベレトの存在に気づくと早々にディミトリを諦め帰って行った。そういった輩は少ないが、ベレトに害が無くてもディミトリはディミトリなりに対処を考えていたのだ。それを知ってしまえば、此方が恥ずかしくなってしまう。

    「それで、先生。身体は平気か? まだ寝ててもいいぞ」
    「ん…、ディミトリも……」
    「ああ。お前の側にいるよ。安心してくれ」

     とくとくと聞こえる心音に、ベレトは瞳を閉じる。日々の疲れと昨晩の激しい情事も相まって身体の疲労は、全くと言っていいほどに回復はしていない。ディミトリの心音に安心してしまい、意識が遠退いていく。空腹も感じない程に、彼の性をその身で受け止めたせいか今はひたすらに眠い。落ちる意識の中、確かに彼が呟いた「愛してる」の言葉だけは聞き逃さなかった。


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