胴体を真っ二つにした。
肉と骨が引き裂かれ一つだった肉の塊が二つになって地面に転がった。血が止めどなく溢れ真っ白な雪を汚している。
地面に転がったボクと同じ顔をしている彼の表情を見ると、何故、身体が動かないんだろうと不思議そうな顔で空を見上げていた。
その表情からは痛みは微塵も感じられない。
キミはこの世界に生み出されて何十年、何百年と立つのに白亜のままだ。そしてこれからもそうなのだろう。
「やっぱりキミは失敗作だよ」
剣を彼の首元に勢いよく突き刺す。彼は相変わらず苦痛を感じていない様子だったが、空を見上げていた眼球がゆるゆるとこちらを捉える。
彼の目はボクとまったく同じ色をしていた。
しばらくたって、彼の口元から微かに漏れていた白い息が無くなりピクリとも動かなくなった。
首元から剣を引き抜くと血がどぷりと溢れだし、更に白い雪を汚す。
あんなに自分の不完全さを象徴する証を隠していたのに最後にその傷で息絶えるなんて、皮肉な話だ。
どんなに隠し通しても、ボクと君はこの世界の理から逸脱した存在だ。
キミがボクに成り代わろうとしてもその事実は変わらないというのに。
──そう心の中で語りかけると、ボクと同じ顔した彼が鏡のように嘲笑っていた気がした。
手に持っていた剣を振り、血を払う。
「アルベドー!」
剣をしまったところでボクの名を呼ぶ声と共に吹雪の向こう側から微かに金色が見える。あれは旅人の色だ。
無価値だったボクに意味をくれた人。
──もし、もしも、自分もキミと同じ失敗作だったとしても、旅人と一緒ならば黄金に至れるのかもしれない。
ボクは踵を返し、その場をあとにした。