今日は珍しく、荷物持ちとして烏丸さんと一緒にお買い物。
もちろん行く場所は近所のスーパー。最近は自分の家周辺だけでなく、烏丸さんの家周辺のスーパーの安売りさえ気にするようになってしまった。
「それで朝火。今日の夕飯は何にする予定なのだろうか」
「うーん……そうですねえ……。スーパーに入ってから決めます」
ひゅうっと風が吹く。秋から冬に移りかわろうとしている季節は、何か温かいものが食べたくなる。
色々考えながら歩いていると、いつの間にか目的地であるスーパーに着いていた。入口に入ると烏丸さんはまず、かごとカートを持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
「構わん」
カートを引いて入り、私達はゆっくりと食材を選んでいく。ただ、あらかじめ何も決めていないのでこれではない、あれではないの繰り返しだった。
すると烏丸さんがある場所を見つめていた。視線の先は小さいモニターで、お料理のあれこれが流れていた。白菜鍋やシチューといった寒い日にぴったりなお料理の映像が流れる中、烏丸さんがあれはなんだといいながら食い入るように見ていたものがあった。
土鍋の中に熱いお出汁と具材たちがくつくつと煮込まれているそれは――
「ああ、それはおでんですね」
「おでん……」
味が染みているであろう大根やたまご、そしてちくわぶや餅巾着、がんもどきといった沢山の具材が煮込まれているおでん。どうやら、烏丸さんはそれを気になったようだ。
「では、今日のお夕飯はこれにしましょうか」
「これは美味いものなのか?」
「美味しいですよ~。出汁がしっかり染みた大根やこんにゃく、そしてたまごに変わり種で餅巾着とか入れて楽しめるお料理です」
それを聞いて烏丸さんは少し気になっている様子だった。今日のメニューが決まり、私はおでんに入れる基本的な具材たちをかごの中に入れていった。
「ああ、そういえば。これはお姉ちゃんが言っていたのですが、おでんはお酒にもあうって聞きますよ」
「……ほう」
私は知っている。烏丸さんの自室に酒類が隠されていることを(恐らく私の事を思って隠しているのだろうけれど)。
「では楽しみだな。そのおでんという料理」
「本当は1日寝かせて作りたいんですけれど……明日も食べれるので」
明日は月曜なので私は染み染みのおでんが食べられないけれど、烏丸さんの酒のつまみになれたらいいかなと思う。
「ところで朝火」
「はい?」
「具材に紛れて、プリンを入れているな?」
「い、いいじゃないですか!」
(続きは烏がふれあう朝で書けたらと思います……)