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    huwasao

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    huwasao

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    pixivアップ中のむざぎゆ連載、「貴方の紺碧の空27話」の序盤。己の尻を叩くためにアップ。お目汚し失礼します。むざぎゆ、もっと増えないかな~とアニメを見直し&神作者様方の作品を見て萌え補充中。

    #むざぎゆ

    洋館の寝室で独り、無惨は佇んでいた。
    いつもは折り目正しいシャツは皺がより、整えている髪は風を受けたように乱れたまま。
    果たして記憶はないが、あれからどうやってか、無惨は洋館に戻ってきていた。


    力なく室内を見渡せば、机の上に置いてある読みかけの本や、飲みかけのお茶が眼に入る。まるで出掛けた時のまま、時が止まったように感じる。しかし此処に、彼はいない。義勇は、いない。

    (来ないで!頼む、……………今は…今は触らないで……、お願いだから………来ないで…っ)

    泣きながら崩れ落ちる青の羽織が。
    嗚咽をあげながら手をふり払う震えた肩が。
    今でも鮮明に眼に焼き付いている。

    拒絶の言葉は身を切り刻む刃となり、無惨の身を抉り続けている。かつて対峙した日の呼吸の使い手の斬撃よりも深く深く。
    しかし身体を蝕む痛みより、無惨は己が許せなかった。自ら誓いを破り、義勇にあんな顔をさせた己が許しがたい。後悔が波のように押し寄せては身を苛んでいく。
    義勇が倒れた時、二度と彼に辛い思いをさせないと誓ったのに、なんで私は想いを抑えられなかったのか。内なる問いかけだが、答えは既に出ている。ーーーー嫉妬。泣きながら風柱の名を呼ぶ姿に、歯止めが効かなかった。その結果がこれか……。

    ぶわりと無惨の周囲に殺気が膨らんだ。煙のように纏うそれは、力となり部屋を破壊する筈だった。だがーーー。

    カチャリーーー!
    何かが、ぶつかる音。

    覇気に煽られ椅子やシーツが激しく揺れる中、やけにハッキリその音だけは耳に響いた。音の主を見つけ、無惨の顔に翳りがよぎる。先程視界の端に捉えた、テーブルの上の飲みかけのお茶が入った白磁のティーカップ。
    揺らめいていた力が、みるみる萎んでいく。はためいていカーテンも、揺れていた家具も、何事もなかったかのように鎮まっていた。
    静寂が戻った時、無惨はゆっくりとテーブルに歩を進めた。辿り着いた先、紅い瞳には眼下の亜麻色の液体が写っていた。

    身に巣くう激情が陽炎のように消えていく。
    替わり思い出す、愛しい人の声。

    (なぁ、無惨。疲れているなら、これを飲んでみてくれ)

    横浜での件の後、眠りから覚めたある日。
    いつものように義勇の傍で眠り、起きたら彼が差し出してくれたのが、この亜麻色の飲み物。

    (昔、姉さんに作ってもらったんだ。風邪引いた時とか、疲れている時に。お前、紅茶好きだろう?だから、これなら……)

    紅茶にハチミツとミルクを入れたもので、普段紅茶に何も入れない無惨の眉が潜められたが、義勇は気にすることなく、騙されたと思って飲んでみろと勧められ……口に含んで驚いた。紅茶の苦味の中に甘味が広がり、じんわり体に沁みていくような。甘いものはあまり好まないが、確かに美味しかった。
    素直に美味いと伝えたら、不安げに見つめていた義勇は、それはもう陽だまりのような微笑みを返してくれて。ドクンと高鳴った鼓動に、危うくカップを落としかけてしまったのは、遠くない思い出。

    それというのも、義勇がいることで眠るようになった無惨だが、熟睡する習慣がなかったからか、長時間睡眠後は上手く覚醒出来ないことが多かった。当初、俺と同じで寝起きが悪いんだな、と苦笑していた義勇だったが、覚醒が悪ければ睡眠の質も下がるというもの。徐々に疲労が蓄積していたのは自覚していた。ただ、そこは鬼の始祖。多少の疲れはモノともしないし、改めて言うことでもなく、いずれ改善するだろうと高を括っていたのだが、近くで見ていて義勇が気付かないわけもない。
    だからこれなら…と、言の葉は途中で切れていたが、その先にあろう憂慮を、無惨はしかと察していた。心配ーー。他の者なら忌むべき思いが、義勇なら向けられて嬉しいと思う。
    紅い瞳が弱々しく陰る。
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    huwasao

    PROGRESSバレンタインに上げる予定だった、ライヤン前提の皇帝+双璧他の途中。pixiv連載中のたまゆら〜でライヤンEndの先のイメージですが、皆生存してて反逆も起きてないIFの世界線話として、生暖かい目で見て貰えると助かります。この先ビッテンやミュラーが出て、最後にライヤンのR18のつもりです。書けたら頑張ります。本編がまだヤンが帝国に着いてすらいないので、こちらも頑張ります。
    たまゆら〜ライヤンEnd後のバレンタインIFこんな喜びを隠さない陛下、初めて見たな。

    実に珍しい光景に、皇帝首席副官のアルツール·フォン·シュトライト中将は、暫し逡巡する。手元の紙の束を、今渡すか渡さないかである。非常に迷ったが、渡さないことには話が始まらないので、当初の予定通り、執務机に座す皇帝の前に書類を差し出した。
    いつもなら直ぐに目を通し始めるラインハルトだが、条件反射で受け取りはしたものの、全く視線が動いていないことに、シュトライトはやれやれと内心溜息を吐く。 

    「ーーー陛下。私は暫し席を外した方が良うございますか?」
    「っ!?何だ突然?」

    いや、何だと言われても。
    さも意外と見上げてくる若き皇帝だが、手に取った書類はくしゃりと悲しい音をたててるし、明らかに動揺しているのが見て取れる。
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