尾月原稿「……お前、営業なのにプレゼン下手くそだな」
あまりにも拙く、しどろもどろなそれらの言葉が耳から潜り込み、食道を伝って落ちて、そうして腹の奥底にすとりすとりと降り積もっていくような感覚がした。いつもの無数の膜を重ねた言葉ではない、剥き出しの言葉の漣。それらはどこか、幼い子供が一生懸命に紡ぐその響きに似ていた。
「……自分に価値があって、売り込むことになるなんて想定してなかったので。完全な資料不足ですな」」
「営業成績一位取ったこともある奴が、聞いて呆れるな」
「アンタも同じようなもんでしょう」
自分に、誰かに乞われるような価値があるかと問われれば、多分月島も同じように否と答えるだろう。その上で長所を上げて売り込めなんて言われたら途方に暮れるだろう。欠陥部分は慣れたように指摘し並べ立てられるが、逆をするのは酷く難しい。何よりも、自分にそれだけの価値があると声高々に宣言しているようで恥ずかしくて堪らないのだ。
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