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    myoga_nasu_umai

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    myoga_nasu_umai

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    イデアズ💀🐙 未来捏造。結婚している二人。
    バレバレな嘘をつく🐙のお話。甘め。短いです。

    #イデアズ
    ideas

    ホイップミルクマイハニー「うわ、もうこんな時間じゃん」

    並々ならぬ集中力で作業をしていた僕は、長時間放置プレイをしてしまった自分のスマートフォンを手に取る。ディスプレイに表示された時刻は二十三時を過ぎていた。
    一緒に暮らすアズールからは特に連絡は来ていない。もしかしてあの子は今夜、遅くなるのだろうか。デスクワークで固まった身体を伸ばしつつ、僕は自室からキッチンへ向かう。眠気覚ましのためとはいえ、コーヒーを飲み過ぎたせいで若干胃が痛い。加齢ですかな、と独りごちて部屋のドアを閉めた。

    キッチンやリビングにアズールはいない。僕は流しにここ数日間で部屋に溜め込んでいたマグカップを起きつつ、スマートフォンでメッセージアプリを起動する。仕事の納期の関係で二週間ほど、アズールとはすれ違いの生活をしていた。
    結婚をしてから僕たちは同じ部屋でキングサイズのベッドで寝ている。男二人だし、広々眠れる方が良いだろうと購入したベッド。しかし結局のところ狭くて暗いところが落ち着くアズールは、僕にくっついてぎゅうぎゅうになって寝るのでスペースが余りまくっているのは内緒だ。お互いに別で自室はある。今回のようにどちらかの仕事が立て込んでいる時は自室にあるソファベッドで休むようにしていた。そう、僕たちはしばらく一緒に寝ていない。もちろん軽いキスやハグはしていたけど、ゆっくりアズールと過ごすのは久しぶりだ。今晩は可愛いあの子を抱き締めてたっぷり甘やかしてやろうと考えていたのだけれど、肝心のアズールがいない。

    『今日、帰ってこない?』

    簡単なメッセージを送信する。既読にはならない。忙しいのかな。冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、飲みながら玄関へ向かう。宅配ボックスに荷物届いてたっけ。取りに行かないとな。ダラダラの部屋着のスウェットがずり下がるのを直しつつ、ふと見慣れた靴が目に入った。
    ぴかぴかに磨かれたアズールの革靴。これがあるということは。

    「アズール、帰ってきてる……?」

    僕はバタバタと音を立てながら、二人の寝室のドアを開く。いない。ベッドの中はもぬけの殻だ。浴室やトイレも入っている気配はないし、あとはアズールの部屋だけ。
    アズールが何も言わずに自室にこもるのは珍しい。こういう時はきっと、何かあった時。ベストタイミング、拙者。早めに仕事を終わらせた大天才なのでは。
    ふかふかのキングサイズのベッドに腰掛けて再びスマートフォンをチェックする。やっぱりアズールからの返信はないし既読はついていない。さて、あの子が篭城する部屋へ行くとしますか。

    「アズール、いるんでしょ」

    念の為、コンコンとアズールの部屋をノックする。返事はない。デスヨネーと思いつつ、僕は部屋のドアノブを回した。鍵はかかっていない。あっさりとアズールの城への潜入に成功した僕はソファベッドでブランケットを被って縮こまる、可愛いパートナーを発見した。二人でネット通販したイカ猫タコ猫もこもこブランケットの小山がもぞりと動く。僕が部屋に入ってからも無言だ。

    「アズール~アズ~おかえり。帰ってたんだね」
    「……ただいま」

    アズールはブランケットから顔を出さずに返事をする。こういう時に無視をしないで答えるのはこの子らしい。僕はソファベッドの空いているところに座って、ブランケット越しにアズールの身体を優しくポンポンと叩いた。

    「君が帰ってたの気付かないくらい没頭して作業してましたわ~。いつ頃帰ってきてたの」
    「……イデアさん。すみません、ひとりにして貰えませんか」

    アズールにしては覇気がない声でぼそりと呟いた。ひとりにして欲しい。はいはい、嘘だね。バレバレな嘘過ぎて、僕は思わずふふ、と声を漏らして笑ってしまった。恐らくアズールには気づかれてはいないだろうけど。
    だってアズールが本当に僕に放っておいて欲しければまずドアの鍵をかけるし、なんなら施錠魔法までかけてガチガチにするに決まっている。ドアはそのまま、どうぞ入ってきてくださいと言わんばかりのこのオープンなアズールの城。僕は自分の頬がどんどん緩んでいくのを感じる。きっとアズールが見ていたら「イデアさん!」と怒られそうなくらい締まりのない顔。僕のアズールは相変わらず、甘えるのが下手くそだ。昔よりは幾分か良くはなったけれど、しんどいならすぐに僕のところへ来たら良かったのに。この子はいつだって僕のことを甘やかそうとする。それと同じくらい、いやもっとそれ以上に僕はアズールを甘やかして愛したいのだ。いつか僕なしでは生きてはいけなくなるくらいに。
    恐らく、仕事で何かあったに違いない。アズールのことだ、上手くやってのけてここまで帰って来た筈だ。それでもこうして僕に甘えたいサインを出している。余程疲れているんだろう。敢えて僕がアズールに詳細を聞くことはしない。必要がないから。僕にとって重要なのは何があったか、ではなくその後だ。この子が話したくなった時はいくらでも聞くし、何も言わないならそれでいい。アズールが全ての鎧を取り払えるのは、僕の前だけなのだ。

    「そっか、ひとりになりたいか~。拙者、アズール不足で死にそうでござる。二週間ぶりにアズ吸いしたいし、何もしなくていいから抱っこしてゴロゴロしちゃだめ?」

    あ、チューもしたい、とつえ加えて僕は、ブランケットの上からアズールの頭がありそうな位置を撫でる。アズールは無言のまま、僕の好きにさせてくれた。

    「イデアさんは甘えたですねえ」
    「フヒッ。君が僕を甘やかすからデショ」

    アズールはひょっこりとブランケットの隙間から顔を見せる。潤んだスカイブルーの目元が少しだけ、赤くなっていて。僕は屈んでそこへ、そっと唇を寄せた。そのまま無抵抗なアズールのブランケットを剥ぎ取って、僕の腕の中へ閉じ込める。久しぶりに感じるアズールの体温は変わらず心地よかった。アズールの首元に顔を埋め深呼吸をする。爽やかなコロンの香りとアズールの甘さが混ざった匂い。僕はこれがたまらなく好きだ。

    「ん……シャワー、浴びていないから。あんまり嗅がないで」
    「君はいつだっていい匂いだろ。もっと」
    「あっ、こら……ふふ。甘えんぼうですねえ。可愛い」
    「そうそう。僕は甘えただからさ、もっと甘やかしてよアズール」

    僕はこの子を甘やかされるふりをして甘やかす。本当はアズールだって気づいている筈だ。甘え下手なパートナーはいつだって最高に可愛くて愛おしい。少しだけ泣きそうな顔をした後に「仕方がないですね、特別ですよ」と微笑んだアズールの唇へ、そっと自分の青を重ねた。軽いバードキスを繰り返しら柔らかい唇を食む。何度もキスをしていたら少しだけ、アズールの眉間の皺が和らいだ気がした。僕はチュッと音をたてて、口元の黒子へ口付ける。アズールは僕の頬を両手で挟み、硝子細工のような瞳でじっと僕を見た。

    「イデアさん。一緒にお風呂に入りましょう。シャンプーして差し上げます」
    「お風呂からの甘やかしフルコース?」
    「ええ。僕、明日はお休みにしてきました。泡風呂にしちゃいましょう」
    「お、いいですな。アヒルさん持ち込む?」
    「持ってるんですか」
    「実はこの前通販でアヒル隊長セット買っちゃった」

    アズールは僕の首に腕を回し、顔中にキスの雨を降らせる。じゃれるようにして僕の鼻先、唇、顎を甘噛みしてきた。仕返しだ、とアズールごとソファベッドに寝転がり、また口付けを何度も繰り返す。きっと今日、僕たちはセックスをしない。子供みたいにお風呂で全力で遊んで久しぶりにくっついて眠る。
    アズールが僕を甘やかしてくれるらしいので、僕もしっかりお返しをしないとフェアじゃない。
    さあ、まずはお風呂の準備をしなくては。その前にもう少しだけ、キスをしてもいいよね、アズール。

    【ホイップミルクマイハニー】
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