花束 静かな森の中、背の高い広葉樹はその葉を四方に繁らせ、緑のあいだから足元に向かって幾筋も光が差し込んでいた。
囀る柔らかな鳥の声がそこかしこの高い枝から降ってくる。下草の薄い場所を選んで歩みながら、ダイは横を歩くラーハルトに話しかけた。
「ラーハルトは父さんに怒られることなんか、なかっただろ」
「いえ、叱咤されることはございました。槍術の訓練で私が至らぬ時や……戦いの中においても」
「それはさ、怒るっていうのとちょっと違うよ。おれもさあ、父さんがもうちょっと穏やかだったらなあ」
「戦の時は厳しいお言葉を使われることがありました。ですが、そうでない時は穏やかに話をされる方でしたよ」
「そっ……そうなの?」
出会った瞬間からあの感じだったけど、とダイは記憶を思い返してみる。余計なことは喋らないイメージはあるけど、穏やかっていう感じじゃなかったような。とにかく戦闘中の記憶しかなくて、しかも敵として対峙した時間の方が長かったから思い出せる会話はどれもかなり強烈なものばかりだ。
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