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    Tonya

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    Tonya

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    お題「蓋然性の反逆」
    ボクタイ

    物心ついた時、世界は闇に覆われていた。
    闇の一族の名の示す通り、本来ならば人は立ち入れぬ場所だった。自分とて例外ではない。ただ生まれ持った月光仔の血によって生かされただけ。暗黒物質を埋め込まれ、尖兵となり。不要と切り捨てられた「人」として部分は、暗い底で凍えた息をしていた。
    窒息しなかったのは。否、できなかったのは彼女がいたからだった。
    否定され、抑圧され、それでも生きることを諦められない。愚かな人の性を彼女は肯定した。狂気に呑まれた自分がもたらす滅びさえ受け入れ、最後は破壊の獣と共に永遠の眠りについた。
    もはや我々は同じ時を歩む存在ですらなく、だが、それは歪んだ永遠が蔓延した世紀末でなければ本来の姿でもあったのかもしれない。すべてがあるべきようにあれとは思わない。事実アンデッドの介入も、種のはらむ危険性を危惧してのことだった。
    この星を内包する銀河系にとっての正しさは種の破滅だ。だが、種は芽吹いてしまった。愚かで未熟で、絶えず進化を続ける人間に。
    自我がはじまる前にもがいていた己の心のように、世界が闇に覆われてもなお人間は生きることを渇望する。正しさ以前の本能であり、種として正しい姿でもある。
    もう二度と諦めはしない。
    今は遥か天上の、記憶の中の微笑みに照らされているのだから。
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