Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    8hacka9_MEW

    @8hacka9_wataru

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 29

    8hacka9_MEW

    ☆quiet follow

    ワタルが花火を・・・と見る話

    目の前で沢山の火花が弾け、間もなく、ドン!という音が、夜空一杯に響いた。
    わあっ、と、そこかしこで歓声が上がる。ワタルも、周りと同じ様に、声を上げた。
    夏休みも終わりに近付き、今夜は、地元の川べりで花火大会が行われていた。
    尤も、毎年人手が多いため、会場に子どもが行くのは中々に厳しく、見に行くのを断念する家も多かった。
    そんな折、近所のマンションに住むワタルのクラスメイトの親が複数名、管理人に掛け合い、花火の時間のみ特別に、子ども達に屋上を解放してくれる事になった。
    ワタルも、仲の良かったクラスメイトの計らいで、共に屋上で、皆と花火を眺めていた。
    パッと花咲く火花は、円や輪を、色とりどりに描いては消えていく。
    次々と上がる花火に、ワタル達は夢中になって、屋上の手すりを掴んで、身を乗り出す様に見ていた。

    なんて、綺麗なんだろうと思った。

    こんなにキレイなら、もし、叶うなら……

    ワタルの心に、フッ、と顔が思い浮かぶ。
    一緒に見たら、きっと楽しいだろうと、思う相手の姿が……

    ドン!と、花火の音が、夜空を揺らした気がした。
    幾重にも、沢山の花火が上がり始める。
    もうすぐ終わりだろうか、と、思ったワタルは、なぜだか、ふと、自分の隣を見て……

    息を、詰まらせた。

    自分と同じように手すりを掴み、夢中で花火を見ているその横顔を、花火が照らしている。
    夜の闇にあって、なお輝く金色の髪。
    暗がりでも分かる、澄んだ青い瞳。
    上空に上がる花火を、目を輝かせて見ていた。
    その顔は、本当に嬉しそうで、楽しそうで……

    最後の、一際大きな花火が打ち上がり、ワタルは思わず上空を見上げた。
    火花は見事な柳の形となって、夜空から地上へと流れていく。

    キレイだな

    そんな呟きが聞こえたと思った、その瞬間

    ワタルの隣には、もう人影は跡形も無くなっていた。

    「………」

    花火の見せた幻だったのだろうか。
    ワタルの心に、夜空に咲いた花火の様な残像が残った。



    その後、数組の家族と、ワタルの家の前の道で、花火をする事になった。それなりに広く、比較的車通りも少ない道なので、大声で騒がない、という約束をして、皆明々に持ち寄った花火を取り出した。

    「宿題やった?」
    「まだ終わってないのがあるから見せて」
    「自分でやんなよ」

    そんな会話が行き来する中、ワタルは皆と共に花火を持って、手元の火花を楽しんでいた。暗闇の中で、くるくると花火で弧を描いてみると、一瞬、光の帯が出来た。
    やがて消えてしまった花火の燃えかすを水の入ったバケツに入れて、次は何をしようかと、花火の束の側にしゃがんだ時だった。

    側に、見覚えのある人影が、同じ様にしゃがんでいる。アスファルトに置いてある花火を、珍しそうにまじまじと見ていた。
    あまりに自然に皆の中にいるので、誰も気付いていない様だったが……

    「…………」

    ワタルは、声をかけようかと迷ったが、その前に顔を上げて、ワタルを見た。目が合うと、何だか恥ずかしそうに、照れ臭そうに笑った。ワタルは微笑んで、花火の中から、細い糸の様な花火を二つ持ち、一本を差し出した。
    相手は目を瞬いているが、恐る恐る、という様に、それを受け取った。
    ワタルは手招きをして、火がついた蝋燭の入っている、金属製のバケツへと近付いた。後ろから着いてくる相手の事を、誰一人気付いていない。まるでワタルにしか、見えていないかの様だった。
    ワタルはそこにしゃがむと、そっと、バケツの蝋燭に花火を近付ける。火が先端に燃え移り、素早くワタルがバケツの外へと出すと、小さな火の玉が出来上がって、パチパチと爆ぜ出した。
    相手も、同じ様に火をつけて、花火をバケツから出した。
    小さく爆ぜる火花を見て、ワタルに得意げに笑った。ワタルも微笑み、静かに、と、口元に人差し指を近付けた。
    あまり揺らすと、せっかくの火の玉が落ちてしまう。
    相手は察したのか、真面目な顔になり、小さく頷いて火花を凝視した。
    小さく何度も爆ぜる火花は、先程の夜空に咲いた花火よりも静かだったが、それでもとても美しかった。
    相手も、先程の花火を見ていた時と同じように、楽しげに見ている。青い瞳に映る火花が、その眼差しを輝かせて美しく彩っていた。
    やがて、火の玉が徐々に小さくなる。火花が消える頃……

    顔を上げると、もう傍らの相手の姿は、見えなくなっていた。

    「ワタルくん、もう線香花火をやってるの?」
    クラスメイトに声をかけられて、ワタルは笑って頷いた。
    「もっと派手なの残ってるのに」
    「うん…けど、一番好きなんだ。線香花火が」
    「あ、それはちょっと分かるかも」

    クラスメイト達も、徐々に線香花火を持ち出して、火をつけていく。
    ワタルも再び線香花火を手に取って、皆と小さな花火を楽しんだ。
    花火を持つ人の輪に、もう、先程の人影は現れなかった。
    けれどワタルは、今もすぐ側で、この火花を嬉しげに見ているかもしれないと思いながら、小さな火玉が落ちないよう、その橙の輝きを見つめ続けていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭☺🙏👏❤💖😍👍💘💕❤🎇❤💘💖😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works