遠出「少し、遠出しようと思うのだが、お前も共にどうだ?」
「我には……降魔があります故……その……」
いつものように、望舒旅館で共に茶を飲んでいた時であった。鍾離から誘いを受けたのだ。一体どこへ行こうというのだろう。璃月港や沈玉の谷では遠出というかは微妙なところだ。モンドは遠出に値するだろうか。あまり遠くでなければ共に行くこともできるかもしれないが、行けない可能性の方が高いと思った。
「そうか」
鍾離は目を伏せ、茶を眺めていた。しばしの沈黙が訪れる。ふぅ。と鍾離が息を吐いて茶を一口飲んだ。気落ちされてしまったのかもしれない。
「そ、その……行先によっては……可能かと」
おずおずと全く無理ではない旨を伝えると、じっと石珀色の瞳に見つめられた。
2299