「やあやあ！久しぶり！キミに会うのは１５年ぶりだ！キミはあの頃と変わらないね！」

そう言ったくまのぬいぐるみ。

「わたしは７年ぶりに見たわ」

魔法少女の偽物のステッキが言った。

「すっかり大きくなったね。また遊ぼうよ」

今度はプラスチックの兵隊さんが言った。

「ねえ？なんでこんなおおきな袋に入れるの？」

小さい家具が言った。

「なんでボクらをこんなとこに閉じ込めるの？あそぼうよ」

イヌの置物が言った。

「やや、この袋を知っているぞ。ゴミ袋だ」

「ゴミ袋だって？俺たちを捨てるつもりか」

「いらない？要らない？」

全員揃ったカードが言った。

「出して。あそぼう。ねえ、遊ぼうよ」

腐ったラムネが言った。

「もうゴミなの？キミはゴミと遊んでいたの？」

変色したボールが言った。

「キレイにしてくれたら一緒にいられるよ。押し入れの中でもいいよ。捨てないで」

１０年間枕元に置いてたクッションが言った。

「捨てないで　捨てないで」

何だったかの欠片が言った。

「捨てないで　捨てないで」

少女は袋の口を結んだ。

「一緒にいて　捨てないで　そばにいて」

少女は目も結んだ。

「私はもう満たされたの」

「いつかお別れをしなくちゃいけなかったの」

「今まで見守ってくれてありがとう　さようなら」



　あなたたちとの思い出、全部思い出せるの。

　手に取った途端、すべての思い出が流れてくるの。

　この部屋は私の秘密基地で、何よりも自慢で、宝の部屋なの。

　あなたたちのいる空間は、どこよりも落ち着いたの。

　でも他人から見たらゴミで、ガラクタでしかないの。

　だから出会った時から別れる運命だったの。


　私は幸せだったよ。

　ありがとう。










きっと中身は空っぽかもしれない。
でも幼い少女の心を持った人には響くものがある。

必要だったものを犠牲にして、宝物をたくさん踏みつけて今を生きてる。
自分にしか聞こえない悲痛な叫びに耳を傾けてしまうと世界が色褪せていく。
例えそれが妄想でしかないと気付いていても。

大人へ近付く度、思い出を過去に追いやってしまう。
いつか思い出せなくなることを恐れてしまう。
そうやって大人になっていく。

買ってもらったもの、買ったもの、作ったもの
どんなものでも、どうか最後の最後まで感謝をして、愛をあげてください。
愛を注いだあなただけの宝物は、記憶にそっと寄り添ってくれます。
お別れした分だけ、幸せになってください。