玲紗で一紗誕最近、一紗がよく歌っている。
シチュエーション的には、所謂事後の、ベッドの上で。
玲司の知らない曲ではあったが、いつも同じメロディーを聞かされるうちに、自然と覚えた。
「それ、何? 洋楽とか?」
「……なんでも良いだろ」
一度だけ訊いてみたら、そっけない返事とともに背中を向けられてしまった。
少しの沈黙のあとに聞こえてきたのは、すっかりお馴染みとなった旋律だ。
機嫌が悪ければこうはいかないはずだと、玲司は考えを巡らせた。これは熱情がもたらす体の飢え、心の渇きを満たしてやれた証なのだと思うと、いっそう愛おしく聞こえるようになった。
***
「……で、聞きたいことってなんだよ」
SolidSの大が向かいに掛けた。
出された紅茶と引き換えにするかのように、玲司はケーキの箱を差し出しながら言った。
1930