消える煙と残す約束。 満天の星空に白い煙を吹きかけた。
有害以外の何物でもないそれは、無風の宙を舞ってゆるく消えていく。
分厚いガラス扉の向こうでは、華やかで賑やかなパーティが今もなお続いていた。
バルコニーの柵に肘をつき、何度目かの煙を吐き出した時、背後で扉の開く音がした。
「甲斐田くん、喫煙所は一階ですよ」
注意にしては柔らかく、甘い声がかけられる。
「今日くらいお硬いこと言わないでよ、犬飼」
煙草をくわえたまま、声の方へと振り返った。
パーティ仕様の重厚なスーツに身を包んだ彼は、いつもの看守服とは違う色気を纏っている。少し跳ねた髪や幼さの残る顔が、引き締まった身体とのアンバランスさをより妖しく見せた。
「犬飼も一本どお?」
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