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    tugechanman

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    少しこちら(https://privatter.net/p/6272139)の話に関連してます。
    レトディミ。

    ディミギ!3 お題「攻めの持ち物を壊すディミトリ」「あっ」

     パリン という儚い音と共に焦ったような声。
     ベレトが手に持った茶器から向かいに座っているディミトリへと視線を移すと、ディミトリは茶器の取っ手のひとかけらのみを指でつまんだまま眉尻を下げ「すまない」と申し訳なさそうに謝った。彼が指の力を緩めると支えを失ったそのかけらもパラパラと砕けて机にこぼれていく。
     机には取っ手の一部が砕かれた茶器が受け皿に収まっていた。中身は半分ほど入っていたが、ちょうど持ち上げようとした瞬間に器用に取っ手のみ砕いたようで、倒れたりこぼれたし様子はなかった。
    「かまわない。危ないから動かないで」
     そう言って立ち上がろうとするディミトリを制すると、ベレトは代わりに席を立ち手際よく破片や割れたカップを片付けていく。
     服まで掃われ食堂から借りてきた新しい茶器も用意され、ベレトがお茶会を再開しようとお茶を入れ直す頃にはディミトリはますます眉尻を下げ、ベレトよりも大きいはずの体をしゅんと小さくさせてしまっていた。
     ベレトは気にするなという気持ちをこめてポンポンと背を軽く叩いて自分の席につきなおすが、彼の眉は下がったままだ。
    「すまない。あれは気に入っているものだったろう」
     その言葉にベレトは「はて?」と小首をかしげる。あの茶器に特別な思い入れはなかったし、気に入っていると話をした覚えもなかった。そう思っているのが顔に出ていたのかディミトリから「その、お前の私物だったから」と補足が入る。
     なるほど、たしかに自室でのお茶会で出す茶器はベレト自身が用意した物であった。自分で選んで用意して物ならば気に入っているものだろうとディミトリも考えたのだろう。実のところは、たまたま市場にでているのを見つけ、使う頻度が多いということもあり私物として購入しただけであった。しかし、だから気にするなといても真面目な彼は納得しないだろう。
    「なら、今度新しい茶器を贈ってくれないか。お前が選んでくれたものでお茶会がしたい」
    「! わかった!すぐに用意しよう!」
     ベレトがそういうとディミトリは表情をパッと明るくさせ、ようやく入れなおしたお茶に口を付けた。
    「最近は力加減もずいぶんとできているつもりだったんだがな」
    「鋏も使えるようになったと、メルセデスも言っていたな」
    「はは、懐かしいことを覚えているな」
    「書類を自分で紐でまとめているのを見て感激していた」
    「そこまで…いや、そうだな。昔の俺だったら紐をちぎるか書類がめちゃくちゃになっていただろうな…」
     先ほどまでの申し訳なさそうな表情はすっかり消え、会話の調子も戻ってくる。そうして入れなおしたお茶が飲み干される頃、ディミトリが少し熱を持った期待するような視線をベレトに向けた。
    「今日のお茶は、果実の香りだったな」
    「カミツレの方が良かった?」
    「いや…今夜は、これがいい」
     ディミトリが好きな茶葉はカミツレの花茶だ。長年のお茶会で皆の好みを熟知しているベレトがそれを知らないはずはなく、別のお茶を出すときは考えがあってのことだ。
     カミツレには心を落ち着かせる効果がある。その効果は睡眠を促す効果があるとも言われ、つまりは眠ってしまわれては困る際にあえて別のお茶を出すのだ。その理由をディミトリも知っている。
    「でも今夜は力加減を誤ってしまうかもな」
    そう言いながらもディミトリは手を伸ばし、机に添えられたベレトの手に指を絡ませてくる。
    「だからと言って、自分の腕をかきむしるのはしないように」
    「なら、そうしないように縫い留めてくれ」
    絡められた指をベレトも絡め返す。それを合図に二人は睦言を語らう場所を褥へと変えるのだった。



     その数日後、軽い気持ちでねだった新しい茶器がフェルディナントやローレンツも腰を抜かすような高級茶器となって贈られ、ベレトも無表情ながら仰天することとなった。
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