マーシュ広い魔法舎でも、そこに暮らす魔法使いは二十一人もいて、少し歩き回れば誰かに会うのは簡単だ。ひとつ屋根のしたにいて、共同生活を送っているのだから当たり前のことかもしれないけど、その中で自分は少しひとの様子に気を配ることが美徳と思い込みすぎていたのかもしれない。
私は、自室のベッドの上で無為に時間を過ごしていた。
自分自身に対する慢心のツケがきていることにうっかり気づいたときの気持ちというのは、知らない間に作った小さな傷に気づいてようやく痛みだすそれに似ている気がする。
ひとの世話ばかりしようとして、自分の世話がまったくできていない。誰かにしてもらうのとは違う、自分の手でするべきことを疎かにしていた―とひとりになってみて少なからず軽くなった心に思う。
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