神仙級道士の僕が催眠なんかに負けるわけがありません!(キリッ) 藤丸立香は浮かれていた。相変わらず人理は漂白されており、明日の人類史の行方もようとして知れず。いつ殺されてもおかしくない状況は変わりがない。
しかし彼も年頃の青年だ。好きな人と晴れて両思いになれたというだけで、その心は簡単に上向いた。
「おはようございます。立香」
「お、おはようございます…」
穏やかな微笑みをたたえて立香を揺り起こすその人。優しくて、穏やかで、綺麗で、ついでに良い匂いのするお兄さん――太公望。コヤンスカヤ討伐の折に縁を結んだカルデアの英霊だった。
彼がカルデアにやってきて日は浅い。だが、あのツングースカを共に戦った彼にすっかり惚れ込んだ立香は必死に縁を手繰り、太公望を当時の記憶を保持した状態で召喚することに成功した。そうして口説き倒し拝み倒して恋人関係となった。
朝だからか太公望は軽装だ。天女を彷彿とさせる三臨姿とは違い、ぴったりとした道服は彼のスタイルの良さを存分に引き立てていた。
(朝から刺激が強い……)
薄らとした胸元の影だとか、抱き寄せたくなるような腰だとか、禁欲的だからこそ暴きたくなるような首元からそっと目を逸らし、立香は礼を言った。起こしてくれるのは有難いが、朝から自制心を試される。
悩みといえばその程度で、藤丸立香は浮かれ切っていた。だから某幼い魔女から「まあ素敵! 貴方たちに祝福を」と言われて反射的に「ありがとう」と返答した。
「着替えを手伝いましょうか?」
「ありがとう。大丈夫だよ」
恋人関係となった太公望は随分と献身的に尽くそうとしてくる。その気持ちは有難いのだが、着替えは自分でもできるし、そういうことをさせるのは従者扱いしているようで気が引ける。それに、今触れられたら暴発しそうだ。
「……僕に望むこととか、何かありますか?」
「一緒に居てくれればそれでいいよ」
昔の人間だからか、恋人には尽くすものだと考えているのだろうか。一緒にいるだけでと言っても太公望はあまりピンときていないようだ。この辺は後々話し合っていけばいいだろう。ただ今日はそこまでの時間はない。
「でも」
「うーん、じゃあ、オレの事好きでいて? はい、太公望さんはオレが好きで好きで堪らなくなる〜」
何故か手近にあった五円玉に紐を通した物をプラプラさせて冗談めかして話を打ち切った。
とはいえこれも本心だった。彼はサーヴァントとして十分すぎるほどに働いている。
ただ笑ってそばにいてくれるだけで今は十分だ。
「……もー、僕みたいな神仙級道士に催眠術なんて効くわけないじゃないですか」
「あはは……」
あからさまに誤魔化されたのに気を悪くしたのか、ジト目でため息をつかれた。少し呆れられてしまったかもしれない。自信満々なところも可愛い、と口にすればまた呆れられるかもしれなくて立香は口をつぐんだ。
「そんなことしてないで、早くおちんちん出してください。集合に間に合わなくなりますよ」
「へ」
太公望が唐突にひざまづいた。何を言われたのか脳が理解を拒んだせいでスタンした立香のズボンのチャックへと手を伸ばす。
「さァて、今日のおちんぽ清掃係として、立派に綺麗にしてみせますよー!」
カルデアにそんな係ありません!
見たことある。これ見たことある! 催眠系エロ漫画の展開だ! 常識をエロく改変されて無自覚なままえっちなことしちゃうやつだ!
「嘘でしょ!」
しかし、彼は至って真面目だった。立香の雄を手早く下着から取り出したかと思えば、ぱくりと先端を咥えてしまう。ねっとりとした口内に迎え入れられ、立香の息子は堪え性もなくギンギンになった。
「き、汚ですよ!」
「ひははいふぁら」
「そ、そのまま喋らないでぇ!」
敏感な所を咥えられたまま声を出された瞬間、ビリビリとした快楽が迸り、たまらず悲鳴を上げる。
「汚いから綺麗にするんでしょう? んっ♥」
太公望がいつもの調子なのがまた具合が悪い。
当然のようにぺろぺろと立香の男根を舐め清め、溢れた雫を舐める。一体どこでこんなことを覚えたんだと肩を揺らして問い正したいが良すぎてそれどころではない。
「ん、おっき……じゅぷっ♥♥♥」
「あああ……!」
舐めるだけでは飽き足らず、太公望はまた立香の雄を口内に迎え入れた。今度は喉の辺りまでしっかりと。
「ん、ふ、ぁ……♥」
小さな口を占領する立香の男根のせいで、端正な薄い頬が不自然に変形している。視界からも暴力的なエロスに襲われて、もはや太公望を止めるどころではない。喉奥を突きたがる腰を押しとどめるだけで精一杯だった。
じゅぷっ♥じゅっぽっ♥
太公望はそんな立香の様子を見てくすりと笑った、ような気がする。清らかな道士お兄さんにあるまじき音を立てて熱い口内を行き来する立香の雄。
愛しい太公望渾身のおちんぽ清掃もとい濃厚フェラに、若い立香は呆気なく限界を迎えた。
「う、っ…! たいこ、ぼ…さんっ、離して、出る」
「ん、らして、くらさい♥♥」
じゅるるるる♥♥♥と強いバキュームに誘われて、立香は太公望の口の中に放精してしまった。
「あ、うわっ!」
「んーーーっ!♥♥♥」
びゅるるるる!!♥♥どぴゅっ♥びゅるる♥♥
出してしまった。しっかり全部。こんなに綺麗な人の口を汚してしまった。
(催眠状態の太公望さんに……オレ最低だ……)
自己嫌悪する暇もない。太公望はそのまま口を開けた。真っ赤な舌や粘膜に絡む白いモノは勿論立香の精液で、居た堪れないのに目が離せなくなる。
「ひっふぁいれまひたへ」
「あああ……!」
いっぱい出ましたね、と言ったのだろう。
早く吐き出して、とティッシュを出す前に太公望はこくりとそれを飲み干してしまった。
「ん、は…おいし……♥」
これも催眠術のせいなのかうっとりと赤らんだ顔で太公望が微笑む。えっちすぎて眩暈がする。
魔力は篭っているからサーヴァントにとって毒ではないだろうが、美味しいわけがない。味覚までおかしくなってしまったのだろうか。
「あ、もうそろそろ時間ですよ」
さっと立ち上がった太公望はいつものように笑っている。さっきの行為は本当に仕事の一つだと言わんばかりだ。狐につままれた気分で彼に背中を押されるがままドアまで来てしまう。
「行ってきます……」
「はい、いってらっしゃいませー」
ハッとして振り返る。ミジンコ程度になってしまった思考力でも、忘れてはならないことがある。
このままでは様子のおかしい太公望が他の人間に出会い、同じようなことをしてしまうかもしれない。駄目絶対!
「太公望さん! 今日はオレが帰るまでずっとここにいてください! 結界張って誰も部屋に入れちゃダメ! いい!?」
「は、……はい♥」
太公望は立香の剣幕に驚いて目を丸くしたが、次の瞬間何かを期待したように頬を赤らめた。そんなえっちな顔でこっち見ないで!
また勃起してしまう前に立香は部屋から飛び出した。
どうしようどうしようどうしよう。
ミーティングに出ている間も、素材を集めている間も集中などできるはずがない。
どうしようどうしようどうしよう。
太公望の異変で頭がいっぱいだった。常ならばダヴィンチだとか他のキャスター達に相談するのだが、内容が内容なだけにそれも躊躇われた。今日の編成が手練れのサーヴァントばかりなのは幸いだった。この程度の戦闘は立香の指示など無くても簡単にこなしてみせる。
直近で関わったのはメディアリリィだ。彼女ほどの魔女ならば太公望を惑わすことも可能だろう。だが、あんなエロ展開をあの子が企むか、と言われればそれも考えづらい。
今日の編成でこの手の事を聞きやすいのは……蘆屋道満くらいだろうか。
素材集めをつつがなく終え、シミュレーションルームを出る。できるだけ何気ない様子を装って道満の隣を歩いた。
「あ、あのさー、道満って催眠術とか…詳しかったりする?」
「拙僧は法師陰陽師にて」
「デスヨネー」
間髪入れずにそう返された。流石に怪訝な顔をされる。
「ただ……無意識のうちにそのようなことを成功させてしまったことがあります」
「え?」
「まだ拙僧が術者として未熟であった頃の話です。とある娘の親から娘の記憶を消してほしいと依頼を受けました」
ある娘が山賊に人が殺される場面を見てしまい、それから眠れなくなってしまった。記憶さえなくなれば悩まされることはなくなるだろうと両親はあらゆる術者に相談していたそうだ。
若い蘆屋道満もそのうちの一人。
頼み込まれて断れなかったものの、その頃の道満はまだ人の記憶を操るほどの力もない。儀式を行い、神仏に祈願するしか方法など思いつかなかった。
祈りで忘れたい記憶が消し去れたら苦労はない。道満の意図としては熱心に念仏を唱える事に集中すれば少しは気が紛れるだろうという程度の考えだった。ついでに雰囲気を出す為に祈祷を行い簡単な術で奇跡を演出してみる。
するとどうしたことだろう。娘の記憶は翌日にはすっかり失われていた。
「今から思えばあれこそ原始的な催眠術であったのでしょうな」
いつになく真面目な顔で彼は呟いた。
忘れたかった、その気持ちそのものが催眠術の成功を誘発したのだろうと。
「催眠術とは高度な技術を要するものと言いますが。……ですが、本人がかかることを望んでいれば、その難易度は劇的に下がりましょう」
「……なるほど」
珍しく道満が真面目に話してくれたところ悪いが、あまり役には立たない話だった。だって、太公望があんなことを望んでいるはずがない。
「ところで」といつものニヤニヤ笑いを取り戻した道満が立香の顔を覗き込む。トラブルの臭いを嗅ぎつけたようだ。
「何かございましたか?」
「な、何でもないよ!! ありがとう!」
これ以上追求されないよう走って逃げた。
彼ほどの術者ならば太公望を治せるかもしれないが、ついでとばかりにどんな悪戯をされるか分かったものではない。とはいえ他の何とかできそうなキャスター陣にも言い辛い。下手に騒ぎを大きくすれば太公望本人の沽券にも関わる。
ぐるぐると悩み倒しながらも、彼の様子も気になるので立香は足早に自室へと戻ってみたのだった。
「お帰りなさい。お疲れ様です。今日はどうでしたか?」
彼は立香のデスクに座って何かの巻物に目を通していた。立香が戻ってきたため、それをさっと消し去って振り返る。
その様子はいつもの太公望そのものだった。催眠状態は時間経過によって治ったのかもしれない。
ほっと息を吐いた立香の声音がひとりでに明るくなる。やっぱり太公望さんは清らかに笑ってるのが似合うな。いずれはそういうこともしたいけど、もう少し親密になってから――
「う、うん。結構素材落ちたよ。これで太公望さんのスキルも上げられそう……って何で脱いでるのぉ!」
「? 素材を頂いた日にはお礼として肉便器になるのはサーヴァントとしての常識ですよね」
躊躇いなく道士服のズボンを床に落としながら太公望は首を傾げた。
治ってなかった!! しかも悪化してない!?
「だ、駄目! 絶対駄目! どっから覚えたの肉便器なんて!!」
駄目だ。恥ずかしいとかそんなことを言っている場合ではない。これはもう覚悟を決めて報告するしかない。ダヴィンチちゃんとキャスターのクーフーリン兄貴ならきっとどうにかしてくれるはず。
反射的に拒絶すると、太公望は不満そうに唇を尖らせた。そんな顔も可愛い……と思わず見惚れてしまう。
「ええー……今日は僕の素材だって聞いてたので……きちんと準備しておいたのに」
細いが男らしく筋張った手が立香の手を取り、そのまま腰を抱かせる。さらにそれを下へ滑らせれば、服越しに何か硬いものが指先に触れた――お尻に何か入ってる!?
「ね?♥ 頑張っていただいたお礼に♥僕でいっぱい気持ち良くなってください♥」
この部屋で立香を待っている間、ナニをしていたのか。これを一人で挿れていたのか。想像しただけで一気に股間へ血液が集まる。
ぷちりと音を立てて、立香の理性が吹き飛んだ。
「ごめんっ、太公望さん!」
ベッドへうつ伏せにひっくり返してチャイナドレスのような袍を捲る。太公望の桃尻は黒い栓のようなもので塞がれていた。指先を引っ掛けられそうな小さいリングが生えている。
「抜きます」
「あっ、あ、いきなり抜いては……ひあぁっ♥♥♥」
ちゅぽん♥
小ぶりな栓は少し引っ張っただけで容易に抜けてしまった。小さめでシリコンのような素材。少なくとも怪我はしていなさそうだと息をつく。
入り口の辺りを拡張していた栓、つまりアナルプラグをベッドサイドへ放り投げる。どこから調達したのかは後で聞くとして両手で拡げてみればくっぱりとほやほや、濃いピンク色の粘膜が眼前で震えている。
今すぐこの中に入りたい。獣じみた欲望が際限なく頭を擡げるが、理性を総動員して耐え忍ぶ。