きっかけは戸森君 今年の晦日はちょうど定休日にあたる曜日だったので、おにぎり宮は12月29日をもって年内営業を終了し、晦日に大掃除をして大晦日からのんびりすることにした。
経営もやっと軌道に乗り出しバイトを雇う余裕もできて、初めて雇った戸森という青年はおっとりとしているがよく気の効く働き者で、初めて雇う側に立った治にしたらとてもやりやすい相手だった。その戸森と二人で朝から普段できない棚の奥や冷蔵庫などを念入りに掃除していた。
あと2日で新年ということで街もざわめき、店の前の通りも人通りが多い。
「戸森君は帰省せんの?たしか奈良の方やったやんな?」
棚から食器を取り出して拭き掃除をしていた戸森は振り返ることなく返事をした。
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