空気より軽くて命ほどに重い『空気より軽くて命ほどに重い』
遊園地が楽しいのは、あくまでも客として訪れた場合である。
平日とはいえこんな人混みに、まして引率者として三十余名のガキと共に放り込まれるなど、正気の沙汰ではない。やれバスに酔っただの、やれ迷子だの転んだだの。高校生なんてまだまだ子どもだ。はしゃぐあまり周りが見えなくなって、目を離した隙に怪我をする。まったく冗談じゃない。責任を問われるのはいつだって教員だ。
絶え間なく流れる陽気なBGMの中、銀八は盛大に溜息をついた。遠足という行事は本当に気が重い。生徒の安全に細心の注意を払いつつ、さりとて一般客の迷惑にもならないようにと、羊飼いのごとく学生たちを追いかけて園内を歩き回らなくてはならないし、かと思えば能天気な本人たちは「先生一緒に写真撮ろう」だの「アイス買って」だのと纏わりついてくる始末だ。うるせえ、俺はお前らの命護るだけで精一杯なんだよ!
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