夜明け2017年 12月 24日 7時前
あれから十年続いてる不眠症の様な浅い眠りから目覚め
とうに身支度は整えている
「あーあ⋯⋯こんな朝日を見るなんてなぁ」
「⋯⋯悟の眼には、何が映っているのかな」
窓から射す柔らかい光が、焼くように4つの眼を照らす
新しい朝が昇る
「私はね⋯⋯いや、ふふ、怒られそうなんだけど」
「なんだよ、言えよ今更ばか」
面白くない話が出そうな夏油の含み笑いに五条はぶすくれて唇を尖らせる
ここはずっと穏やかな天気の昼間が続く
全ての世界から切り取られた様な不思議な空間
辛気臭い話は全部全部早めに出し切って欲しい
いつもの悪態をついた後「今の俺なら何でも受け止められるよ」と意気がって笑ってやるべきだったと後悔しながら続きを促す
「ふ、今更だね⋯⋯あの日、乙骨君を⋯⋯
リカを確認した時にね」
うげ、百鬼夜行の話かよと顔をしかめる五条の肩に
軽く体当たりする様にのしかかり言葉を続ける
「自覚は無かったけど
限界だったんだろうね、今思えば
呪術師の未来を、助ける為に、守る為に、立ち上がったのに
あんな⋯⋯あんな子供達を手に掛けて良い筈が⋯⋯」
「うっせ、俺も色々限界だったし⋯⋯」
「ふ、君は、変わらないな」
夏油の震える拳に重ねた五条の掌は思ったより大きく
見上げると見慣れぬ黒いアイマスクを着けている
「死ぬまで変わんない奴なんていないでしょ」
へらっと笑ってみせる口元が余りにも無理をしている様に見えブハッと吹き出し
また五条の機嫌を損ねてしまう
「ご、ごめんすまない本当に、その、への字口は止めよう
悟ごめんハハッ」
「いーけど?いーですけどお前が笑ってくれるなら!」
「ふ、でも嬉しかったんだ
今までに無い新しい日が来た様で⋯⋯
凄かったよ、乙骨君の覚悟」
「まぁ?僕の生徒ですし?おッ」
握っていた手が少し大きくなったかと思えば
肩を寄せている夏油があの袈裟を着ている
「あの日は少し寒かったね、せっかくの門出だし晴れて欲しかった」
「肌寒かったな⋯⋯俺の心みたいに?曇り空でさぁ!もー
ヤダからなああいうの!」
「ごめん、次があったら先にちゃんと相談する」
「おい次ある想て⋯⋯いや、おう、言えよ」
にぃっと笑う夏油が肩以上に頭を寄せてくる
「ぉッ」
「あの日、日の出頃に少し晴れたんだ
少しだったけど、最後に見た良い朝だった」
「あー⋯⋯寝不足だったか射すみたいに眩しかったな」
「⋯⋯眩しかったね」
そこかしこに備えられているモニターには12月24日に傷付けられた子供達の今の姿が映る
「頑張った甲斐があったね、五条先生」
「んフッ⋯⋯おう」
「え、何その笑い」
「なんもー⋯⋯んふふ
頼もしいねぇ僕の生徒達!」
【同じ景色を見ている】
【希望の光】
【この空の下で】