天幕の中の暗闇で その瞬間、全身を貫いていたバトルの熱狂と興奮から急速に解放され、敵の攻撃に容赦なく打たれまくった体はボロボロなのに痛みもまるで感じず、俺たちが麻天狼に負けたという実感などもっとほど遠かった。しかし、俺たちの事情などお構いなしにショーは進行するらしいので、俺たちは早々に舞台から退場させられ、目のくらむような照明の眩しさと観客席のざわめきから一転、薄暗く狭い廊下をとぼとぼと歩いて控室に向かっていた。
ディビジョンバトルというのは、どうやら負けても命をとられるものではないらしい。麻天狼の連中とのバトルはともかく、この興行が俺にくれるスリルはその程度のものなのか。俺の血液はバトルの余韻でいまだに沸騰を続けながら、一方でどこかでひどく白けていた。
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