Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    おたぬ

    @wtnk_twst

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍁 ❄ 🍰 🍪
    POIPOI 122

    おたぬ

    ☆quiet follow

    健全にDKな彰人少年②

    見慣れすぎたオレの自室。その室内にあるベッドの中央に、人生で初めてできた彼女である青柳冬弥がちょこんと座っていた。姿勢よく正座した彼女は膝の上で握った手をもじもじと落ち着きなく動かして、僅かに目を泳がせる。その緊張した様子に、あぁ、ついにここまで来たのだと実感し、オレは拳を握って冬弥と向かい合う形でベッドに座った。ここまで、長かった。男女にしては距離感がおかしいと常々言われてきたが、いざ交際を始めると冬弥が変に意識してしまって、手を繋ぐのもキスをするのもひと苦労だった。

    いつもはどうとも思わないギシッと軋むスプリングの音が妙に艶めかしく感じて、意識的に外に追いやる。今は冬弥に集中しなければ。今日を逃せば、母はまだしも絵名が朝から出かけている日など、なかなか巡っては来ないのだから。

    「冬弥、本当にいいんだな?」
    「あ、あぁ……大丈夫だ」

    いつもより強ばった表情で彼女が頷く。どんなに規模の大きなライブだって気後れせず、楽しそうにこなすというのに。とは言え、冬弥にとってこれからやることは知識も経験もない未知数の領域だろうから、仕方がないのだろうが。

    「あ、彰人……」
    「ん?どうした?」

    困ったように眉を八の字にした冬弥が頬を赤らめ、俯きがちに言った。

    「私はこういったことは……その、初めてで……だから、勝手がよくわからないのだが……よ、よろしく、頼む……」
    「……ん、お、おう……任せろ……」

    『初めて』という言葉にドキリと胸が高鳴る。彼女の生い立ちを考えれば、そうであると簡単に予想はできるのだが、本人に面と向かって告げられるとどうしても来るものがあった。

    (お、落ち着け……冬弥はオレ以上に慣れてねぇんだから、オレがしっかりリードしてやらねぇと……)

    たとえオレが彼女と同じく『初めて』だったとしても、こういったことに関しての知識はきっと彼女よりも豊富なのだから。ドクンドクンと喧しい鼓動を鎮める。焦る必要はない。何も今日で最後まで行かずともよいのだ。少しずつ2人の音を作り上げたように、オレたちのペースで関係を進めていけばいい。

    (………っ、よし)

    自身に喝を入れて、事前に頭に入れておいた情報を引っ張り出す。たしか、最初は焦らずに……。

    「まずは、触り合う……くらいから……?」

    だった気がする。お互いの気分を高めるだとか、ムードを作る、とか。そんなことが書かれていた、はずだ。

    「……わ、わかった。何事も段階を踏むのは、大事なことだな」

    オレの言葉に頷いた冬弥は羽織っていたパーカーを肩から落とし肘に引っかかった状態で、シャツの裾を両手で掴むとそのまま一気に胸元まで捲り上げた。

    捲り、上げ……た?

    「…………えっ」
    「………ん?」

    キョトンとした顔で冬弥は首を傾げるが、オレは開いた口をわなわなと震わせることしかできない。

    淡い水色の下着に守られ、傷どころかシミひとつない綺麗な白い肌に、男の誰もが夢見る魅惑の谷間は下着のお陰なのか、それとも彼女のそれそのものの大きさゆえかはわからないが、しっかりと深く刻まれている。

    ゴクリと、初めて生で見る女性のそれに、オレは思わず生唾を飲む。服の上からでも同年代のクラスメイトたちと比べて大きいとは思っていたが、ここまでとは思わなかった。着痩せするタイプ、というやつなのだろうか。

    「……あ、あき、と……ち、違った……か?」
    「……はっ?え?何だ?」

    気付けばオレはそこを食い入るように見てしまっており、冬弥の声にやっと我へと返る。彼女は肩を縮こませて不安げな顔をしていた。その表情に、オレは腕に挟まれてさらに寄せられた豊満な双丘へ自然と目が吸い寄せられそうになるのを叱咤する。

    「そ、その……こういったことは、てっきり裸でするものだと思っていたのだが……私は間違ってしまっただろうか?」
    「……はだ…っ!?え、あっ……いや……間違っちゃいねぇ……よ?」

    本当は直に彼女の肌を見る心の準備ができておらず、服の上から少しずつ慣れていこうとしていた、なんて格好の悪いことは言えず、オレは突っかえながらそう返した。普段ならばオレのおかしな態度に気が付きそうなものだが、冬弥もいっぱいいっぱいなのか「そうか、よかった」と安堵の息を吐いている。

    そして、初手から胸をさらけ出すという爆弾をオレに投げつけた彼女は、そこにさらなる火種を投下してきた。

    「では、彰人……さ、触る……か?」

    たしかに、触り合うと言ったのはオレである。しかしそれは布越しで、という前提条件があったわけで。下着があるとはいえ、たわわに実ったそれを直接見て触れる覚悟など、まったくもってしてきていないわけで。

    「………あ、彰人……?やはり、私の体では不満……だろうか?」

    何も言わないオレに、冬弥は睫毛を切なく揺らして俯いてしまう。その表情に、オレが初めてなように、冬弥だって初めてで、それでも必死に勇気を出してくれているのだと思い知らされる。

    (あぁ、クソ……かっこ悪ぃ……)

    彼女にだけやらせて、彼氏のオレが尻込みしてどうする。
    グッ、とベッドに上がった時よりも強く拳を握り締め、緊張で詰まる喉から無理やり声を出した。

    「………さわ……る……」

    それは、おそらくオレの人生で最も情けないほどに震えた声だった。けれど、冬弥はそんなオレに呆れることもなく、白磁の肌をほんのりと染めて頷いてくれる。

    「ありがとう、彰人」

    お礼を言わないといけないのはこっちだというのに、あまりにも幸せそうな顔でそう言うものだから、オレは何も言えなくて、何も言葉が出てこなくて。

    冬弥の頬にキスをした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🍌🍌🌋🌋👍🌋
    Let's send reactions!
    Replies from the creator