練習とライブ続きだったために挟まれた完全オフの日。あたしは恋人である冬弥とデートをしていた。あたしが朝選んだ服を着て、隣を歩く彼はおそらくどこからどう見てもクールでカッコいい男に見えているだろう。今だって、ほら。
「えっ、見てあの人……超カッコよくない!?」
「あ、ホントだ……すっっごいイケメン……」
「彼女さんも可愛い……!」
すれ違い様に冬弥を見た女性2人が振り返って、そんなことを言っている。カッコいい。カッコいい、ね。思わず出そうになる笑いを噛み殺す。
彼女らは知らないだろう。あたしの隣を姿勢よく歩くこのイケメンが、夜はあたしの下で泣き顔を晒しているなんて。あきと、あきと、と雌の快感に蕩けた声であたしを呼んでいるなんて。誰も、あたし以外誰も、知りはしない。
「……ふふ」
「彰人?どうした?」
「いや、なんでも」
こてん、と小首を傾げる彼があまりに可愛らしくて、あたしは冬弥の腰を、すり、とわざといやらしい手つきで撫でる。それに、ぴくん、と反応するのがまた楽しくて、あたしは笑いながら小声で告げた。
「なぁ冬弥、今夜いいだろ?」
あたしの言葉に息を飲んで、他人にはわからないほど薄らと頬を染めて小さく頷く彼は、やはりカッコいいよりも可愛いという言葉がよく似合う。