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    おたぬ

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    おたぬ

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    事後な感じの🍁❄

    ドライヤーのスイッチをカチリとオフの方へ動かし熱風を止めて、手にしたそれをテーブルの上に置く。それからくたりと力なくこちらに体を預けて寝息を立てている恋人の髪がしっかりと乾いていることを確認し、彰人は冬弥の膝に腕を差し入れ背を支えて、身長の割に軽い体を持ち上げた。

    何も腕に抱えていない状態と差程変わらぬ足取りで寝室へと入り、冬弥をベッドに寝かせた彰人はその細身を改める。聞こえる寝息は穏やかで、その表情から苦しみや痛みといったものは読み取れない。

    (……よかった)

    体が辛かったりはひとまずなさそうな様子に、ホッと胸を撫で下ろす。今夜は自分でも引くくらいに興奮して、彼を感情に任せてめちゃくちゃに抱いてしまった。脳裏に、いや、瞼の裏に焼き付いた光景を思い出して、彰人は頭を抱えたくなった。繰り返される絶頂に痙攣する体を押さえつけ、もうヤダと白銀を涙で潤ませ許容量を超えた快感から逃げようとする腰を引き寄せて、最奥を突き穿つ。そうすると雌の声を上げながら冬弥の中はギューッとキツく締まって、彰人を極楽の果てへと導いてくれる。愛する人と迎える最高の瞬間。互いに互いのみを感じて愛を確かめ合うあの瞬間が彰人はこの上なく好きだった。

    (だからって、さすがにヤりすぎた……よな?)

    失神してから目覚めない恋人の泣き腫らした目元に触れて、自身の失態を深く悔いる。月明かりに照らされる白い肌は赤みがよく映え、痛々しさが際立って、本気で嫌がられていないからといって、ものには限度というものがあるだろう、と誰かに責められているように感じた。事実がその通りなので、そう言われてしまえば彰人は何も言い返せはしないのだが。

    交際を始めて、冬弥と肉体的に繋がるようになってから、もう何年も経っているのに、未だに彼の裸体を前にするとどうしてもがっついてしまう。いつも服を脱がせている時は「今日こそ落ち着いて抱くぞ」と思うのだが、痛くないようにと時間をかけた前戯に焦らされた冬弥に無自覚のまま煽られて、気がつけば彼を獣のように貪っている。それが彰人と冬弥の、夜の営みにおけるお約束のようになっていた。

    (あー……くそっ……)

    脳内で悪態をついて、ガシガシと髪を乱暴に掻き乱す。愛しているからこそ優しくしたいと思うのに、愛しているからこそ燃え上がる気持ちを抑えられない。熱に浮かされた頭と体を冷まそうと、彰人はベランダの戸をガラリと開けて外に出た。夏の終わりを感じさせる夜風が火照った体に心地よい。手摺に寄りかかって彰人はなんとはなしに空を見上げた。満天のように見えるが、きっと眠らぬ街の光で掻き消されている星の瞬きも多いのだろう、そんな星空。

    (今度、冬弥と観に行ってもいいな)

    幼少期を閉ざされた世界で過ごしてきた彼には満天の星空はどのように映って、また、彼は普段隠されている星々を目にして、何を思うのだろうか。きっと、自分には思いつかないような何かを感じ取って、静かに、けれど楽しそうに、澄んだ銀色に星空を映して嬉々と話してくれるに違いない。簡単に想像できるその姿に、彰人は頬を緩ませた。

    天体観測とまではいかないまでも、やはり星を観に行くのはありかもしれない。そんなことを考え、後で具体的なデートプランを練ろうと頭の片隅にメモ書きを貼り付けたところで、吹き付ける風が徐々にその冷たさを増していることに気づき、彰人はベランダを後にした。

    カラカラと室内に戻ってから戸を閉めてベッドへ歩み寄り、その上で眠り続ける恋人に目を向ける。シャツから覗く白の中に散りばめられた無数の赤と、肩に残る歯型。東雲彰人が刻んだ、青柳冬弥が一体誰のものであるのかを表す証。それに指を這わせて、彰人は服でギリギリ隠れるだろう位置に新たな花を咲かせる。

    「おやすみ、冬弥」

    増えた赤に胸の奥が満たされるのを感じながら、彰人は冬弥の隣に横になり、瞼を閉じた。
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